真空管を使って何か無線機を作りたいと思ってきたが、ようやくアイディアが浮かんできた。手始めに受信機を作ってみようと思い始めた。受信機に使える手持ちのパーツとしては11MHz台のクリスタルフィルター、455kHzメカフィル、455kHzIFT、周波数直線型バリコン、メタル管各種、MT管各種がある。真空管受信機となると信号経路は真空管で構成しなければ面白くない。11MHz台のクリスタルフィルターを使うとなると当然真空管で11MHzを増幅することになるが、それよりも455kHzメカフィルの方が増幅回路としては簡単そうである。周波数帯であるが、どちらにしてもCWとなるので現有の自作無線機がカバーしていない30mバンドで検討した。この周波数であれば真空管増幅でもそれほど問題とならない。
なるべく真空管の本数を減らしたいので、周波数変換は7極管を使いゲイン重視とする。中間周波数も1段として、検波にも7極管を使えばこの3本でかなりのゲインを稼ぐことができそうである。5球スーパーにプロダクト検波をつけてみようというコンセプトである。メタル管で自作したことがないので、メタル管で構成を考えてみた。手持ちのメタル管を押入から引っぱり出し、6L7、6K7、6L7を並べてみたが、さすがにメタル管、その大きさは半端ではない。同時に出てきたMT管の6BE6、6BA6、6BE6を並べてみてあっさりMT管による製作に心変わりしてしまった。
455KHzのメカフィルを使って受信機を構成する場合、当たり前だが455KHz台のBFOが必要となる。455KHz台のBFOであるが、高校生の頃、高1中2を製作した折りにトリオのBFOコイルを使って作った経験があるだけであるので、先ず、この製作から手をつけた。
手持ちの本で回路を探すと水晶やセラロックを使ったものと、トランジスタ用455KHzIFTを使ったものが見つかった。ジャンク箱を探すと455KHzIFTが出てきたので、こちらで試作してみた。オリジナルの回路は2SC372を使っていたが、今更、2SC372というわけにもいかず、これまた手持ちの2SC1815で組み立てた。
仮組みした後オシロで波形を見るとブロッキング発信となっていたので、バイアス定数等を調整してそれらしい波形になるように調整した。しかし、カウンターを接続して安定度を計測すると10Hz台が上下に変動している。ノイズがのってFM変調されているようである。電源を乾電池にすると一瞬だが正常な変動になったが、長続きしない。発振回路に8VのレギュレータICを追加したり、デカップリングを厳重にした後、エージングも兼ねて数時間通電しておいて測定すると安定していた。回路自体というよりもカウンターの測定下限周波数が0.5MHzとなっていたので、そちらの問題もあるのかもしれない。
トンジスタ2石の簡単な回路であるが、結構手間取ってしまった。さすがに455kHz台である。特に温度保証しなくても初期変動は100Hz程度に収まっている。
トランジスタ2石BFO回路、コイルはトランジスタ用IFT
バラックセットの状態、左手前がVFO、その上がBFOバラック基板、最上部が受信基板、
右から12Vスイッチング電源、その左は100V:100Vトランスと電解コン
455kHzのメカフィルはCBバンドのトランシーバー用でかなり以前のハムフェアーで購入したものである。インピーダンスは数キロオームなので真空管で使う場合、インピーダンス変換をする必要がある。秋葉原のラジオデパート3Fのパーツ店でトランジスタ用と真空管用のIFTを購入することができた。真空管用は復同調ではなく、一次二次の巻線比が違うのでインピーダンス変換にも使えそうである。トランジスタ用もキャパシタが外付けなのでコンデンサーの耐圧を選べば真空管でも十分に使えそうである。
生基板にIFTとメカフィルを並べてブロック化とし真空管で使えるえるようにした。IFTのチューニングをするために、BFOの発振周波数をメカフィルの中心周波数に合わせて入力し出力をオシロで計測しIFTの調整をした。455kHzあたりであると相対的であるが、オーディオ用の計測器でも何とか測定できるのはありがたい。
局発用にはこれまた20年もののVFO5を転用した。コイルのコアを抜くと7.5MHzに同調するので7MHzのハムバンドに使えることになる。周波数変換6BE6、中間周波数増幅6BA6、プロダクト検波6BE6の構成でどのくらい感度があるか確かめてみる。感度不足の場合はコンセプトからすると邪道かもしれないが、FETのプリアンプを前置して全体のゲイン調整をするつもりである。低周波増幅もつけないで不足したら検討しよう。AGCも後回しにしてする。B電圧も100V:100Vの絶縁トランスを転用するつもりなので、せいぜい150V程度となる。ヒーターは12Vのスイッチング電源を使い、ヒーターは直列に接続する。
バラック正面、左端がVFO、奥の基板上の空色のものが455kHzメカフィル、シャーシも30年前の自作オーディオアンプの残骸
バラック背面、生プリント基板に真空管を配置してある。真空管には念のためシールドケースをかぶせてある
周波数変換、中間周波増幅回路、IFTは秋葉原で購入した真空管用
バラックでの仮組をしたので、調整に入る。最初にVFOの調整である。カウンターをつなぎ7000+455=7455kHzの発振を確認し、バーニア・ダイアルの目盛りをメモした。次にヒーターだけ電源に接続し、真空管が点灯することを確認した。ヒーターは6BE6と6BA6を直列にし、検波は12BE6としたのでDC12Vで点灯できる。B電圧が140V出ていることを確認した後、受信基板へ接続し、各真空管の電圧を測定したがとりあえず、正常であった。
アンテナとして数メートルのビニール線を接続して受信を試みるがザーというノイズがかすかに聞こえるのみである。自作QRP7MHzCWトランシーバーから電波を発射して、受信するとギャーというビートがなんとか受信できたので、電波を出しながらIFTのコアを調整するとゲインが上がってきた。この状態で7MHzバンドを受信するとCWQSOが聞こえてきたが、受信機が発振気味で安定していない。IFTのケースに触ると発振してしまう状態である。各カソードに0.33uFのタンタルコンデンサーを挿入し、VFO、BFOからの配線を同軸ケーブルに変え、各ブロックとシャーシの接続を増し締めするとようやく安定してきた。
低周波増幅がないので、ヘッドフォーンを検波段へ直接接続しているのでゲイン不足であるが、そこそこ受信できる状態となってきたが、SSBを受信すると音質的にはイマイチである。12BE6によるプロダクト検波段のRF入力、BFO入力レベルのチューニングが必要のようである。コンバーター段の6BE6を叩くと発振してしまうので、この手当も必要である。考えてみると真空管を使った受信機の製作は三十数年ぶりである。
AGCを追加した。IFT2次側から33pFで取り出し、ショットキーダイオード2本で倍電圧整流して6BA6と6BE6のグリッドに配線したが、あまり効いているとはいえない。これは後で再挑戦しよう。
やはり、全体的にゲイン不足であるので、低周波増幅を追加することにした。基板の空いている箇所に穴を開けて7ピンソケットを追加した。真空管は検波段の6BE6とシリーズにする必要があるので、ヒーターが6.3V0.3Aのものを探した。6AV6が出てきたので、とりあえずこれでトライした。600オームのヘッドフォーンを使いたいので、60k:600オームのトランスを6AV6のプレートに挿入した。このトランスはオーディオ入力用なので電流を流す用途には向かないが試してみた。
検波段もプレート回路にはトランスが挿入されているが、2次側は1kオームなので、プレート側からコンデンサーで直流カットして、100kオームのボリューム経由で6AV6のグリッドへ接続した。結果的にはやはり6AV6ではパワー不足であった。プレート電流も1mA以下でこれでは600オームのヘッドフォーンにはちょっと辛いものがある。
かわりの真空管を探すことにして真空管ハンドブックを探した。条件はヒーターが6.3V0.3Aのものである。電力増幅管はヒーター電流が多すぎて問題外である。6AU6の3結データがあり、プレート電流も数mA流れるので、6AV6よりはパワーが出そうである。6AU6は手持ちがあるので配線を変えてこちらで試してみた。確かに6AV6よりは良いが、やはりパワー不足の感は否めないが、これで我慢することにした。
プロダクト検波段のRF入力はIFTの2次側から33pFから取り出し、2kオームの半固定ボリューム経由とした。ボリュームを調節すると歪み感は減るが、当然ゲインも下がってしまう。適当なところにとりあえずセットした。
検波をDBMにする実験もしてみたが、BFOのパワー不足でうまく動作しなかった。真空管のように高インピーダンスで動作させる環境に、DBMのローインピーダンスのデバイスを組み合わせるのはやはり簡単にはいかない。ここは当初の予定どおりに6BE6でいくしかないようである。コンバーター段の6BE6の動作不安定はソケットの問題があるかもしれない。シールドケース用のソケットの予備がないので検波段と入れ替え、検波段はシールドケースなしとするか、秋葉まで行ってソケットを購入するかということになるのかな。
現在は7MHz用となっているので、10MHzではVFOを作り替えないといけないので、そのパーツを買い足す必要があるし、ケースも探す必要があるので、やはり秋葉原へ行くことになるようである。
6AU6が1本追加されて計4球となった。やはり球は面倒である。
プロダクト検波、低周波増幅回路、6AU6は三極管接続
6AU6を1本追加したが、あまりうまく動作しているとは言い難い。ヘッドフォーンで聞くと歪みが多いが、クリスタルイャーフォーンで検波段に挿入したトランスの2次側を聞くとそこそこの音なので、6AU6の出力トランスに使った60k:600オームのトランスが直流重畳に耐えられないのかもしれない。
検波段を抵抗負荷にして、そこに挿入していたトランスを6AU6の方に廻した。これが正解で全体のゲインも上がりヘッドフォーンも十分ドライブできるようになった。コンバーター段6BE6の動作不安定は米軍ジャンクのシールドケースに問題があった。これは放熱のための塗料が邪魔をしてアースされていなかったようである。球の上に余計な容量成分が乗っかった状態になったようである。
全体のゲインが上がったら今まで気にならなかったハム音が出てきた。ヒーターに乗っているのか、B電源から来ているのか調べる必要がある。B電源はチョークもチョーク代わりの抵抗も入れてないのでこのあたりから手を着ける必要がある。
7MHzでの受信はとりあえずOKとなったので、本来の30mバンドへと変更することにした。変更箇所はVFOと受信トップのコイルである。VFOのバリコン、トリマを調整しても8MHzどまりであるので、これを使うわけにはいかない。ジャンク箱を探したら、メーカー製のVFO基板が出てきた。これはギァーダイアルが欲しくて買ったものだが、VFO基板は使わないので取り外しておいたものである。回路はクラップなので、トロイダルコアを適当に巻いて150pFのコンデンサーと組み合わせて、ディップメーターで9.5MHz付近になるように巻数を調整した。バリコンは小型の3連のものがあったので、コアに並列にして基板に接続した。カウンターを接続すると9.5MHzから10.0MHz程度の可変範囲で発振した。これでは広すぎるので、バリコンの羽を半分程度抜いて可変範囲が100kHzとなるようにした。
2mm厚のアルミ板に基板とバリコンを並べてブロック化したものをVFO5と入れ替えた。トップのコイルは同調用のコンデンサーを80pFに変えると10MHzに同調できた。ハム音対策として、40uFと1kオームでデカップリングしたら気にならなくなった。アンテナを接続して受信するが、7MHzに比べるとかなり感度が低く、TS530と聞き比べてもその差は歴然である。高周波増幅が必要であるが、コンセプトが5球スーパーなのでもう少しこれでトライみよう。
もう一つやってみたいことがある。それはアンテナコイルを大型のボビンに巻いてみることである。Qの高い同調回路を挿入して少しでもイメージ比を高めてみるつもりである。ボビンの材料を探したが、残念ながら軍用無線機から取り外したタイトのボビンは処分してしまったようで、見つからなかった。
問題はケースである。自作仲間には最初にケースを決めてから作り始める人も多いが、私はとりあえず回路を作ってみることから始める。今回はメイン基板、VFO基板、BFO基板、スイッチング電源、B電源を収納できるものが必要である。出来合のケースではぴったりしたものがない場合、ケースを自作することもある。カット済みのアルミ板と適当なシャーシーをLアングルを使い、ビス・ナットで接合するとかなり丈夫なものができる。ダイアルはバーニィアダイアルとして、コントロール類は電源スイッチ、フォーンジャック、音量、アンテナトリマ程度であろうか。
左端が30mバンド用VFO、9.6MHz台で約100KHz可変、電解コンに1kオームを渡してフィルターとしている。
電源回路、ヒーターは12Vスイッチング電源、マイナスはミュート用
秋葉原へ行ってケースを買ってきた。ケースはリードのAS-3とした。このシリーズのケースは三十数年前に高1中2を作ったときも使った記憶がある。ただし、その時はもっと大型のケースだったはずである。中のシャーシーはアルミであるが、前面パネルは鉄製である。当時は手動ドリルしか持っていなかったので、前面パネルの穴開けに苦労したものである。Sメーター用の穴も開けたはずである。
さすがに、三十数年経つとそれなりの知恵もついてきて、前面パネルは2mm厚のアルミ板へ置き換えた。元の鉄パネルをテンプレートにして、アルミ板をジグソーで切り、ドリルで穴明けした。しかし、ドリルが電動になっただけで、リーマー、シャーシーパンチを使い手作業で穴開けすることは昔と同様である。
前面パネルの部品穴明けが終了したら、パネルを塗装する。パネル面を紙ヤスリで目荒らしし、シンナーでゴミ、油分を取り除いた後、スプレー塗料で塗装する。
パネル面のレイアウトは昔風のレトロなものとした
ケースの準備もできたので、バラック状態の各ブロックを組み込んでいく。電源廻りではトランス2個、スイッチング電源、ネオンランプへAC100Vを供給する必要があるので、3Pのラグ板を中継用に使った。DC12VもVFO、BFO、メイン基板と3箇所へ供給するので、ここでも3Pのラグ板を使い中継した。
実はミュート回路用にマイナス電源が必要なので100V:18Vのトランスをシャーシー下へ配置したが、回路は組み込んでいない。バイアスの電圧を調整して感度を下げるとサイドトーンに使えるのでは思っている。シャーシー下は余裕があるので追々実験するつもりである。ゲイン調整用のボリュームの穴も開けたので、こちらへはとりあえずダミーとしておくつもりである。
受信用アンテナコイルを巻きたいのであるが、適当なボビンが見つからない。薬の空き瓶なんかも手頃と思うがこういうときに限って見つからないものである。コイルを配置するスペースは十分にあるので後からでもなんとかなるだろう。
組み込みが完了してスイッチをONすると問題なく受信ができたので、ケースに入れたら鳴らなくなってしまった。色々つっついたら、メカフィル部分の半田不良が発見された。生基板をグランドにして部品を配置しているので、ちゃんとした基板に差し込んでいる場合に比べ部品の保持という点では問題があるが、お手軽な製作方法なので仕方ない。
中央にVFO、後部にメイン基板、左側に12V電源、右側にトランス、
VFOの左にはアンテナコイルを配置する予定
VXO用の水晶でFET1石の発振器を作り、2倍波を受信してみた。ヘッドフォーン端子にオシロをつなぎ波形を観測すると上側が大分クリップされている。検波段への入力レベルを調整しても全体のレベルは下がってもクリップ状態は解消されない。BFOの入力レベルを結合コンデンサーの容量で調整しても同様である。更に検波段のプレート側にもBFO成分がかなり漏れているがわかった。
朝方、DXに群がるJAのパイルを受信しても各信号の歪みが重なってきれいに分離できない。比較機のTS530ではQRMの中でもそこそこ各信号のビートの差で分離できているのでせめてこのレベルまでには何とかしたい。
Web検索した6BE6プロダクト検波についてのコメントにも同様な状況が記述されていたので、6BE6を使う限り解消は困難かもしれない。そうなると双三極管をつかった方式に変更する必要があるかもしれない。とりあえず、FET2石を使った回路で試験してみよう。あるいはDBM用ICで組むことも考えられるが、信号経路だけは真空管というコンセプトを守りたいので、FETの結果が良ければそれを真空管へ置き換えることにしよう。
アンテナコイルのボビンの材料としてフィルムのケースを使うことにした。100pFで10MHzに同調させるためには5uHが必要なので、エナメル線を20回ほど密巻きにした。100pFの固定コンデンサーを抱かせてディップメーターで測定すると4MHz付近で同調した。考えてみると最近はコイルといえば、トロイダルコアににしか巻いておらず、ソレノイドコイルを巻くのは本当に久しぶりで大分勘が鈍っている。かなり巻き戻して今度は100pFのバリコンを抱かせてディップメーターで測定すると、羽の抜けた状態でようやく10MHz付近に同調した。中間周波数が455kHzなのでイメージは約1MHz下
となり、バリコンの回転角度ではほんのわずかであるが、どちらに同調してるかは区別できる。コイルを受信機へ仮付けてして、アース側から適当なところへタップを出してアンテナ端子へ接続した。バリLに使われていた空芯コイルの残骸があり、こちらの方がQが高そうなので試してみたい。FCZコイルよりもフィルムケースのアンテナコイルが同調も取れて具合が良さそうである。
2SK241を2本使って差動アンプを作り、プロダクト検波の実験をしてみた。ソース抵抗は挿入しないでドレインに3kをつないで、10uFのコンデンサーで取り出した。ゲインはかなりあるが、歪みは相変わらずである。トータル的には6BE6と良い勝負である。RFやBFOの入力レベル調整や回路を洗練すればもう少しマシになりそうであるが、FETで調整しても真空管に置き換えるとまた違ってくるのでこのあたりで止めよう。
6BE6ではどう調整しても歪みが残ってしまう。30年前ではこれでもよかったのだろうが、現在ではどうしても不満てある。いくら真空管を使った受信機といえどもこんな歪みのある復調音では困ってしまう。
困ったときのWeb検索である。http://www.jimcom.net/tube/r4c/でドレークの受信機に付加するICを使った検波回路がヒットした。ICはDBMでおなじみのSN16913Pで部品箱を探したら、以前50MHzトランシーバーの送信バラモジに使った残りが出てきた。さっそく、空中配線で回路を組んで受信機にセットした。
歪みなしでスムーズに受信できる。SN16913P自体ではゲインがないせいか、出力が低くなったが、音調はすこぶる良好である。こうなると現金なもので信号ラインはオール真空管というコンセプトも宗旨替えして、検波段はICにしよう。ただし、検波の6BE6と低周波増幅の6AU6のヒーターをバラにしているので、12AU6あたりに変更して低周波2段にする必要が出てきた。
SN16913Pによる復調回路、全ての入出力はコンデンサーで直流カットする
1週間ほどSN16913Pで実際に受信してみた。全体のゲインがかなり下がったので、検波段の6BE6の代わりに6AV6を1段追加した。それでもゲインは6BE6よりも下がっている。冷静にトーンを聞くとやはり全体に歪みっぽい感じがある。IC廻りの電源のデカップリングを強化したり入力レベルを調整しても劇的には改善されない。トーンが濁ってどうしてもブザー音となってしまう。こうなるともう一度6BE6に戻して比べる必要がある。6BE6では出力側にキャリアがも漏れていたので、1mHと200pFでローパスフィルターを構成してプレートに挿入した。
確かにゲインは上がったが、オシロで観察するとSN16913Pに比べるとノイズ成分も多し、トーンの感じもSN16913Pよりも良くない。しかし、ローパスが効いているのかキャリア成分はカットされている。しばらく6BE6で聞いてみよう。
BFOからの回り込みが信号を濁していることを疑って、BFO回路ブロックをケースから外し、0.5mほど離し別電源とし、信号も同軸ケーブルで供給してみた。しかし、状況は変化なしである。実際の信号を聞きながらBFOの電源を外してみたら、ブザー音でCWが聞こえてしまう。BFOをかけなくてもCWが復調できてしまうのではどうしようもない。この原因としては
1 元のCW信号が変調されている。
2 局発のC/Nが悪く変調されている。
3 信号回路での波形歪みにより変調されている。
等が考えられる。
試しに、軍用真空管受信機BC312で30mバンドを受信してみた。この受信機に火を入れるのは数年ぶりである。BFOを切った状態でも自作受信機と同じようにブザー音のCWが聞こえるが、BFOを入れるとかなりきれいな音調で復調できる。ブザー音のCWにBFOをかけてもそこそこきれいな音調になる。
6BE6の動作例は真空管ハンドブックに掲載されているが、プレート電圧100Vの場合、スクリーン電圧も100Vとなっている。現在の電圧はプレート103V、スクリーン電圧は5kオームの抵抗が直列ドロッパーとなっていて70Vである。試しにこの抵抗をショートしプレートと同電圧にするとかなり感度が下がった。
改めて真空管ハンドブックの周波数変換管の解説を読むと各電極の電圧と感度の間には複雑な関係があるようであり、それらと出力波形の歪みも相関があることがわかった。6BE6はまともに使おうとすると結構手強い真空管のようである。試しに別の電源から260Vを供給すると歪みの感じが違うようである。現在は100V:100Vの絶縁トランスを全波整流しているが、場合によっては倍電圧整流してみよう。
ただし、ウィークデーの早朝や夜間は30mバンドにQRVしている局がほとんどいないので、実際のCWでチェックできない。週末になったら各電極の電圧と音調の関係をじっくりと調査してみよう。ますます泥沼にはまってきたようである。
週末にじっくり調整してみた。特に初段の6BE6はカソード電圧、スクリーン電圧をいろいろと変えてみたが、しっくり来るものはなかった。このあたりが限界なのであろうか。たかが、4球のシングルスーパーでこれほど手間取るとは思ってもみなかった。
真空管のようにハイ・インピーダンスで使うデバイスはロー・インピーダンスで回路が構成できる半導体とは違ったノウハウが必要のようである。半導体の場合、入出力を50オームに規定すれば、各段のゲインやレベル調整はATTで簡単にできるし、回り込み等にもそれほど注意を払わなくても大丈夫である。
私のスキルではどういじってもこれ以上の改善は望めそうにもないので、仮配線となっていた部分を手直しして、とりあえず完成としよう。まだ、手を着けていない部分はミュート用のマイナス電源回路である。この辺りもやり始めると何かありそうな気がするが・・・・。
この受信機とペアとなる送信機も完成したので組み合わせて運用してみた。受信機だけの時はとりあえず聞こえていればよかったが、これでQSOすると困った問題が出てきた。感度不足である。ある局をコールしてQSOが始まるわけであるが、QSBがあると信号が消えてしまいQSOが続かない。別のメーカー製のトランシーバーでチェックすると当たり前だが問題なく聞こえている。やはりRFなしでIF1段のみの5球スーパー的回路構成ではゲイン不足が露呈してしまったようである。
これではどうしようもないので、当初の真空管だけで増幅するというコンセプトからすると邪道であるがトランジスタのプリアンプを追加することにした。最初は2SK125のGGで試したが、これだけでは数dBしかゲインがとれず、2SK241のソース接地の回路に変更した。こちらは20dB近くのゲインがあり、感度不足もかなり改善された。
とりあえず、スタンバイ回路を省略して送信機と接続してみた。送信時にも受信機が生きているのでCWが復調できるのでサイドトーンも不要である。ただし、少し音量が大きめなので送信機と連動してミュートした方がよいだろう。
送信機(上段)との組み合わせ
プリアンプ回路図