秋葉原では少なくとも30年以上前に製造されたIFT、コイル類、バリコンが中古品や未使用品として売られているので、それらを求めれば真空管式スーパーラジオが簡単に製作できる。ただし、どれも数千円の値段が付けられており、ゴミ捨て場からラジオを拾ってきて遊んだ世代としてはそれらのパーツに数千円を支払うのにはどうしても抵抗がある。 世の中良くしたもので、そんな感情を持つ人が多いのであろうか、現代風にアレンジしてあるが、リーズナブルな値段でそれらの代替えパーツが売られている。
上段左はAM用アンテナ・コイルで紙の芯に巻かれてワニスが塗られている。上段右は局発用コイルで11mm角のケースに入っている。使用パリコンは335pFMAXと指定されており、今でも比較的簡単に入手できるポリパリコンが使える。説明書には5球スーパーの回路図が書いてあり、「あさひ通信」が製造元のようであるが、電話番号、住所は記載されていない。
下段の左2個のコイルが初段用のIFTでそれぞれのコイルのローインピーダンス側の巻線を接続して使うようになっている。同調用のコンデンサーは外付けで120pF300Vが指定されている。右2個は次段用のIFTで使い方は初段用と同じである。製造元はアンテナ・コイルと同じ「あさひ通信」である。
コイル、IFTはそれぞれ千円程度で購入できる。秋葉原ではラジオストアー2階のキットが置いてある店かラジオデパート3階のパーツ屋さんで入手できるが、いつもあるとは限らないようである。店主によると売れ筋の品ではないので簡単には仕入れられないとのことであった。2連バリコンはポリバリであればよく見かけるし、昔風の2連バリコンも丹念に探せば千円以下で購入できる。
真空管は昔風のナス管からMT管までお望みのものが秋葉原では簡単に入手できる。ST管用のシールドケースも売られているが、けっこうなお値段である。なるべくお金をかけないというコンセプトであれば素直にMT管を使用することになる。日本では民生用にはあまり使われなかったがメタル管を使えばシールドケースは不要である。ただし、金属ケースに封入されているのでヒーターやフィラメントがほんのり点灯しているのを眺めるという風情はないことになる。
電源トランスはラジオデパート地下の「野口トランス」で適当なものが入手できる。ヒーターには100V:6Vのトランスを使い、高圧は100V:100Vの絶縁トランスを倍電圧して使用すれば、無理して5球スーパー用のトランスを探す必要もない。スピーカー駆動用の小型出力トランスもラジオデパート3階のパーツ屋さんで600円で購入することができた。
トランスは3.3k、5k、10kのタップがある。バリコンはFM用のセクションもある。
ラジオを作るのにあると便利な測定器にシグナル・ジェネレーター(SG)がある。今回はIFT自体を455kHzに同調させなければならないので、どうしても455kHzの信号源が必要となる。真空管受信機を製作したときには一番最初に455kHzのBFOを製作したのでそれを信号源としたが、今回はBFOを作る予定がないので別の手段を講じることとした。
例によってジャンク箱を漁ると3連バリコンと何種類かのインダクターが出てきた。共振周波数を計算して470uHのインダクターとバリコンを直列にした発振回路を作ってみた。出力に周波数カウンターを接続すると600kHzが測定できた。バリコンをもう1セクション並列にすると450kHzとなり、高い方は1600kHz程度まで発振したので、SGもどきとしてAM帯の調整には使えそうである。AM変調をかけることも考えたが、オシロや高入力インピーダンスの電圧計はあるので、そこまでは必要ない。オシロで波形を観察したが、かなり歪んでいる。でも、マーカー用途には十分であろう。出力は50オームで終端して約10mWである。
SGもどき、周波数は自作カウンターで455kHzを計測中
電源トランス、シャーシー、パネル等の不足していたパーツ類を購入したので製作に取りかかった。シャーシーにパネルを立てたものを木製の箱に収納する型式とする。木製の箱は近所のホームセンターで檜の集成材をカットしてもらい外寸でW20*H15*D18cmのものを組み立てた。シャーシーはW15*H5*D10cmとかなり小型のものなので、ヒータートランスが収納できず、シャーシー背面に取り付ける形となってしまった。
配線は昔ながらの錫メッキ線でアースを引き回す方式ではなく、生プリント基板を適当な大きさにカットしたものをシャーシー内部に置き、基板全面をアースポイントとする方式にした。私がトランジスタで自作する時は専らこの方式で製作しているが手軽でしかも高周波特性的にも優れている。
檜集成材の箱と穴開け加工したシャーシー
球の構成は6BE6、6BA6、6BM8の3球としたので必然的に整流と検波はダイオードとなった。やはりシャーシーが小さすぎたようで、組み立てて箱に入れようとしたら6BM8とアンテナコイルが箱の上部につかえてしまうというありさまである。6BM8は配線を外し、ソケットをシャーシー内へ落とし込んだ。アンテナコイルはつかえない場所を探してなんとか押し込んだ。ここまではよかったのだが、今度は前面パネルへ取り付けたスピーカーが当たってしまう。仕方ないので箱の天井板の一部を削り取って収納した。
調整はアンテナ端子からSGもどきの455kHzを注入して6BA6のカソード電圧が最小となるようIFTのコアを調整した。その後、周波数カウンターによる局発の周波数計測である。クリップ線でワン・ターン・コイルをつくり、それを6BE6にに巻き付けると局発周波数が計測できたので、バリコンがいっぱい入った状態で455+535=990kHzとなるように局発コイルのコアを調整した。バリコンにはトラッキング用のトリマがついていないので、これでおしまいである。
アンテナを接続するとNHK、NHK2、AFN、TBSはクリアに入るがそれより上の文化、ニッポンはかなり受信状態が悪い。比較用のラジカセで聞いても同じような状態であったので、このあたりの電界強度が低いようである。
2連バリコンをアンテナコイルから外し、別のバリコンを仮接続して単独に調整できるようにしてみたが、同調点が不明である。アンテナコイルになにかトラブルがありそうである。その内、アンテナコイルを自分で巻いてみよう。
手前はヒータートランス
左がB電源用の絶縁トランス
パネルはアルミ板を黒で塗装した。ダイアルがスピーカーに重なってしまっている。
ダイアルは不動バーニアの目盛り板につまみを接着した。
低周波増幅には6BM8を使用しているが、この球を別のアンプに転用することになった。
代わりの球であるが、MT9ピンで6.3Vということで12AU7Aを使うことにした。
特性図を検討し、終段は150V7mAを動作点とし、前段は負荷100kオーム、カソード抵抗4.2kオームとした。
出力は150mW程度であるが、ベッドサイドで使う分には全く問題ない。
ついでに電源回路にはFETフィルターを挿入した。