トランジスターや真空管を使ってQRP5W用のリニアアンプの実験をしたが、今回はもう少し多い出力を得るための実験をしてみた。
使用する球は6146、2E26、807であるが、目一杯の出力を得ようとすると数百Vの電源が必要である。しかし、手持ちのトランスでは350Vがせいぜいなのでこの条件で実験してみる。
今回は7MHzと10MHzでデータを採ってみた。
プレート電源用DC350V100mA、SG電源用DC190V20mA、ヒーター用AC6.3V1A、バイアス用DC-60Vを3個のトランスを使い用意した。
入力回路はフェライト・コアを使った5t:16tのトランスの2次側を500オームでターミネートした。出力回路はT106-2のコアで18t:3tのトランスを作った。受信用バリコンのFMセクションのギャップが広く、耐圧が高そうだったので、各セクションをパラにして同調用バリコンとした。
NEC製2B46(6146)を使用した。データはAB1級動作で採り、SG電圧は180V、出力は16Wとなった。入力を増やすとグリッド電流が流れ始めAB2級動作へ移行するので、その時点の出力を計測した。
周波数 | プレート電圧 | SG電圧 | BIAS | アイドル電流 | プレート電流 | 出力 | 入力 |
7MHz | 340V | 180V | -45.6V | 21mA | 54mA | 16W | 1.8W |
10MHz | 340V | 180V | -46.5V | 20mA | 51mA | 16W | 1.0W |
RCA製2E26を使用した。データはAB1級動作で採り、SG電圧は180V、出力は10Wとなった。
周波数 | プレート電圧 | SG電圧 | BIAS | アイドル電流 | プレート電流 | 出力 | 入力 |
7MHz | 340V | 180V | -22.0V | 16mA | 40mA | 10W | 1.0W |
10MHz | 340V | 180V | -22.0V | 20mA | 51mA | 10.5W | 0.5W |
807は東芝製である。データシートの動作例からSGを250Vに設定した。AB1級動作では最大出力として11Wが得られた。
周波数 | プレート電圧 | SG電圧 | BIAS | アイドル電流 | プレート電流 | 出力 | 入力 |
7MHz | 340V | 258V | -22.4V | 36mA | 50mA | 11W | 1.0W |
10MHz | 340V | 258V | -22.5V | 36mA | 49mA | 11.2W | 0.5W |
プレート電圧340Vとかなり低めの条件であったが、それでも2B46(6146)では15W超の出力が得られた。 たった15W、されど15Wで、実際に使用するとQRP5Wに比べるとそれなりに応答率が上がるのも事実である。 ただし、真空管をAB級で使うとなると、電源はプレート、SG、ヒーター、バイアスの4種類にもなるが、トランジスターであれば1種類で事足りる。トランジスターでも真空管でも出てくるパワーに変わりはないわけで、あえて真空管を使うためにはそれなりの覚悟?が必要かもしれない。