旧日本軍九四式六号無線機の紹介
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プロローグ

ローカルのOMから所属クラブに無線機類が寄贈された。 その中に旧日本軍の九四式六号無線機があり、筆者がしばらく預かることとなった。戦中から戦後にかけての米軍用無線機は数台、所有しているが、旧日本軍の無線機に実際に接するのは初めてである。よい機会なのでサイトで紹介することにした。
この無線機は双3極管を1本だけ使用した送受信機(トランシーバー)であり、送信系は自励発振段のみのため、実際のQSOには使用できないが、何とかして動作させてみたいとみたいと思っている。

左の写真は筐体から内部を引き出したところである。筐体のサイズはW181mm*H84mm*D132mmと結構コンパクトである。

概要

この九四式六号無線機は近距離用連絡に用いられたものである。使用真空管は双3極管UZ30MCが1本のみであり、使用周波数は25,000kc-45,500kc、モードは電話と変調持続電波電信である。電源は高圧用が135V、フィラメント用が3Vで外部電源を接続する。

このような仕様となると戦後の1950〜1960年代に流行った電池管の3A5を使用した50mc超再生式トランシーバーを思い出す方が多いのでないだろうか。 筆者も自分では制作しなかったが、その種の記事を読んだ記憶がある。

ところで九四式の九四が年代を表しているのはご存じだろうか。皇紀二五九四年に制式となったので九四式ということになる。皇紀二五九四年は昭和九年、西暦だと1934年となる。

名板によると正式名称は九四式六号無線機二三号通信機で昭和一九年二月に東京の山中電機株式会社で製造されたことが判る。全装備台数は数千台に及ぶとのことで、戦後も軍放出品としてかなり出回ったとと思われる。
ちなみに山中電機株式会社は戦前に「テレビアン」というブランドの民生用ラジオを製造していた。

外観

外形寸法は既出のとおりW181mm*H84mm*D132mmである。

【写真 左】電話(A3)と電信(A2)の切り替え用スナップ・スイッチと送、断、受の3ポジションを切り替えるシーメンス・キーがある。

【写真 右】黒丸は電鍵となる押しボタン・スイッチの頭である。
小さなヒンジ付きのパネルを開けると電源ジャックが現れる。

【写真 左】アンテナ用ジャックである。

【写真 右】切り替えスイッチのある面の反対側には電源用のプラグがある。

フロント・パネル

カバー裏には2つのポケットがある。ここには「周波数−ダイアル チャート」、「回路図・部品表」の2つの図表が収納されていたようであるが、残念ながら本機には付属していなかった。

コントロール類は上段左から右へ「同調蓄電器」、「バンド切り替え」、「真空管UZ30MC」、「300mA高周波電流計」

下段左から右へ「肥線抵抗器」、「ヘテロダイン調整器」「送話器・受話器 ジャック」である。

内部構造

同調用蓄電器(バリコン)は直結である。その周辺に3個のコイルが配置されており、スイッチで切り替える。右サイドには内蔵電鍵が配置されている。

No1は空中線接続栓孔、No2は対地線接続栓孔である。

左上から右へ心線抵抗器、ヘテロダイン調整器、送受話器接続栓孔、変調転換器(スナップ・スイッチ)。

左下から右へ電池接続栓、変調兼低周波増幅変成器、送話器変成器である。

右中には送受信転換器(シーメンス・キー)がある。

電鍵

電鍵である。板をU字型に曲げ、スプリングで接点の間隔と押下圧力を調整するシンプルな構造である。

電鍵のつまみはトップがフラットな形状であるが、親指がかかる部分はケース内に隠れているので、ブザーのように押してキーイングすることになる。

部品表ではNo22が電鍵、No1が空中線接続栓孔、No2が対地線接続栓孔、No4・No13・No21・No27は蓄電器(コンデンサー)となっている。

真空管

使用している真空管は双3極管のUZ30MCである。製造年は昭和19年と読める。ベースとガラス・チューブがちょっぴり曲がって接合されている。ベース裏のマークから製造は日立製作所である。

パーツ・チェック

パーツをテスターでチェックしてみた。真空管のフィラメントは断線していなかった。トランス類も断線なし、ボリウム類であるが、ヘテロダイン調整は回すと抵抗値が変化するのでこれもOK、ただし、フィラメント調整用の巻線ボリウムは残念ながら断線していた。 コンデンサー類もショートはしていなかったので、巻線ボリウムをクリップでショートしてやれば、電源を接続出来そうである。

LINKS

九四式六号 無線機http://tubes.kt.fc2.com/JAPAN_RADIO/M94_T6/m94_t6.htm

JA3ANF's PAGE 九四式六号無線機 {二三号型通信機} http://detmills.hp.infoseek.co.jp/94-6/JA3ANF.htm

無線機 九四式六号無線機 http://www13.ocn.ne.jp/~seiroku/musen.html

参考図書

別冊ラジオライフDX Vol3(2012年6月25日発行 三才ブックス)に掲載された「こがしゅうとの電波兵器 九四式六號無線機(二三號H型通信機)篇」に本体、発電機、運用方法等がイラストで詳細に解説されている。

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Last Updated 28/Jun/2013 by mac