サイクル24が始まったとのことで、そうなるとゆっくり海外とラグチューすることも可能である。5Wでもアンテナが良ければ楽しめるが、筆者のプアー・アンテナではちょっと無理である。そんなわけでちょっとだけQROということで、5W出力の自作機に付加するHF用のリニア・アンプを製作することにした。
昔作ったリニア・アンプやパーツ類はほとんど処分してしまったが、オーディオ・アンプにも使える直熱3極管だけは残してあった。直熱3極管となるとGGアンプである。十数年前に6m用の811AGGアンプを作っているが、今度はHF用である。
トランス、バリコン、コイル、RFC等は使わなくなって久しいトリオTS-530Sから取り外した。
もっとも、TS-530Sを改造すると6146Bパラのリニアになるが、パーツだけを流用することにした。
球は811Aシングルであるが、TS-530Sのトランスではフィラメント用の6.3V4Aが用意できないので、6.3V CT 5Aのトランスを別途購入した。
シャーシーはW300*D200*H40であるが、幅を50mmカットして使う予定である。
直熱管GGアンプではフィラメントにチョーク・コイルを挿入する必要がある。 GGアンプの入力インピーダンスは低いが、それでもチョーク・コイルには1kオーム程度のインピーダンスが必要となる。7MHzから使いたいので、そうなると25μHのチョーク・コイルを用意する必要がある。
手持ちのフェライト類に2ターンほど巻いてインダクタンスを測定した。バーと丸棒は0.4μH程度、コアでは2μH程度となったので、コアに1mmエナメル線に絶縁チューブを被せて
バイファイラーで10ターン巻いた。
使用したコアは廃棄パソコンからサルベージしたもので直径28mmである。
ケースはいつものようにシャーシーをアルミ・パネルで囲んで作った。パーツを仮配置してみたが、電源用の電解コンデンサーを置く場所がなかった。サブ・シャーシーをサイド・パネルに取り付けようかと思っている。
ケースのサイズはW250mm*H200mm*D200mmである。
7〜28MHzで使えるGGアンプが完成した。左図は14MHzにおける入出力特性である。やっと50Wというところである。プレート電圧を1000V以上に上げればそれなりの出力が得られるが電源がおおげさになってしまう。
右の写真はGGアンプに使える直熱三極管である。左はGE製の809、中央はロシア製の811A、右はロシア製の572Bである。大きさはほとんど同じであるが、プレート損失は809の25Wに対して811Aは65W、572Bは160Wもある。
コントロールは左下に電源スイッチ、上段左からプレート電流計、プレート同調、ロード、中段にバンド切り替え、コネクターは上がアンテナ、下が入力である。
左奥が電源トランス、その手前がヒーター・トランス、パネル裏左からプレート同調、タンクコイル、バンド切り替え、ロード。811Aはトリタンなので通電するとかなり明るくなる。左サイド・パネルには高圧用電解コンデンサーを取り付けてある。
リア・パネルにはTS-530Sから取り外した冷却ファンをとりつけてある。
真空管ソケット左が入力回路でインピーダンス比1:4のトランスでステップアップし、パイ型1段のLPFを挿入してある。LPFは遮断周波数30MHz、インピーダンス200オームで設計しており、811Aの入力キャパシタンスをLPF素子の一部に組み込むことでキャンセルしている。そのため、7〜28MHzにわたって入力SWRは1.5以内に収まっている。
FFTアナライザー WaveSpectraで2トーンを計測してみた。ドライブ用の無線機は15m/17m 2BAND SSB/CW Tranceiverでバンドは21MHzである。
上図が単体5W出力時、下図がリニアを通した40W出力時である。単体時のIMD特性はお粗末であるが、リニアを通したことによる劣化は特に認められない。