VXOを使用したシングルコンバージョンの6m QRP SSB Tranceiverである。オリジナルはJA7CRJ千葉OMが「ビギナーのためのトランシーバ製作入門」(CQ出版社)で発表されたものである。手持ちのパーツを活用するために使用パーツ、回路は若干、変更してある。VXO用水晶はミズホのピコ6用、11.2735MHzクリスタルフィルターは20年ほど前に購入したCB用である。VXOとキャリア発振回路の電源はレギュレーターで安定化してある。製作方法は生プリント基板を全面アースにしてパーツを配置してあり、空中配線も多用している。オリジナルのファイナルは2SC1906を使っていたが、使い慣れている2SC2086によるA級アンプで約100mWを得ている。
本機の出力は100mWであるが、これでも山岳移動局を呼ぶと結構応答がある。また、Eスポでもタイミングが合えばそこそこQSOできる。山岳移動局を呼ぶだけではなく、当局もハイキングがてら近場の山へ移動運用してみたくなった。山岳移動関係のサイトを見ると山頂から運用する場合、100mWでも問題ないようであるが、少々心許ないので、1W程度までパワーアップしてみることにした。
100mWのままで出力側回路をフェライトコアを使ったトランスに置き換えていろいろと実験してみたが、残念ながら期待した数百mWは得られなかった。やはりトータルのゲインが不足しているので正攻法でもう1段追加することにした。トランジスターはフランジがエミッターとなっており、ヒートシンクに付ける際、絶縁が不要な2SC1971を使うことにした。こちらの回路もフェライトコアを使ったブロードバンドアンプで、出力はLPFを通すという私の定番のものである。バイアスは5Vレギュレータから供給している。ケースに余裕がないので小型のヒートシンクの上に基板をねじ止めし、その上下にパーツを配置しブロック化しヒートシンクごとケースにねじ止めしてある。
入力側の3dBパッドなしでは出力が2W強と出過ぎてしまったので、3dBパッドの挿入、2SC1971のプレート側からベース側への少量のNFB、前段との結合コンデンサーの容量調整で1W出力となるように調整した。無信号時のアイドリング電流は約80mAとなるようにしてある。
左側が入力トランスでインピーダンス比4:1のステップダウンとなっている。右側が出力側でフェライトコアに巻いたチョークを通してコレクタに電源供給している。大きめのセラミックコンデンサーは出力側のDCカット用である。
上の写真の基板の反対側にLPFを装備してある。
1Wパワーアップが完了したので、近場の見晴らしの良いところへ車で移動して試験運用してみた。ローカルが呼んできたので、音質チェックをしてもらったら、回り込みがあるとのこと。アンテナは運転席サイドのルーフに設置したモービル・ホイップなので、アンテナ直下で
運用していたことになる。話の内容が判らないほどではないがかなり気になるとのレポートであった。
早速、回り込み対策である。とりあえず、ジャンク箱にあったフェライトビーズと数百pFのコンデンサーでフィルター回路を作り、マイク入力に挿入してみた。トランシーバーのアンテナ端子に1.5mほどの電線を接続して、ホイップアンテナ代わりにして、別のトランシーバーでモニターする。かなり改善されたが、それでも音声のピークで回り込んでいるようである。
またまた、ジャンク箱を探すと600:600と600:60kのライントランスが出てきた。これらを使い、マイクとアンプを直流的に遮断するとかなり良い結果になった。600:60kのトランスではコンデンサーマイクだけではなく、ダイナミックマイクまで試してみた。結果的にはこれが一番良かった。ジャンクのライントランスはちょっと大きすぎるので、秋葉原で1k:10kのドライバー用トランスを購入してダイナミックマイク用として手直しした。これでも電圧比で約3倍のアップとなり、ダイナミックマイクでもトランジスター1段のアンプで十分に増幅できている。