20m CW Tranceiver
HOME BACK

構想

最近はどちらかというとCW運用の方が多いが、CW用フィルターを装備した自作機はない。SSB用フィルターを装備した自作機でCWを運用しているが、さすがにコンテストではつらいものがある。所有しているTRIO、TS-530Sには500HzCWフィルターを装備してあるが、TS-530は測定器がわりの受信機としてしか使用していないので、このCWフィルターを流用したトランシーバーを計画してみた。といってもスクラッチから製作するのではなく手持ちの自作トランシーバーを改造することにした。
改造することにしたのは数年前に作った6m SSB/CW Tranceiverである。このトランシーバーは9MHzIF+41MHzVFO(プリミックス)のシングルスーパー構成で VFOは7MHz台VCOの周波数変動を制御しているが、制御周期の関係で発振周波数にフラッターを生じ、CWを送信すると直流音ではなく、ブザー音となってしまうという欠点があり、お蔵入りになっていた。
VCOの代わりにDDSを使ったSGもどきから信号を注入するときれいなCWになるので、VFOを手直しすれば十分使える実力はある。このトランシーバーは9MHzIFであるので、TRIOの8831kHzのCWフィルターを装備するのにも都合がよい。

改造することにした6m SSB/CW Tranceiver

構成

TS-530SからSSB用フィルターも取り外すわけにもいかないので、本機はCW専用トランシーバーとして構成する。受信部はSSBジェネレーターをそのまま転用し、CW送信回路はCW専用キャリア発信回路を設ける。オリジナルは6m用であるが、CW運用が多い40m/30mバンドは20mトランシーバー+トランスバーターの組み合わせを多用するので、本機も20m用CW専用トランシーバーとして改造することにする。
SSBジェネレーターは板橋スタンダードを使用した。これは岩本OMが開発したもので、開発された地名から板橋スタンダードと呼ばれている。ほとんどのゲインをAFで稼ぐというかなりユニークなものであるが、実力はかなりのものである。

板橋スタンダード回路図(jpg) 1.72MB

キャリア用水晶

TRIOのCW用フィルターを使うためにはキャリア用の水晶発振子が必要となる。出来合のものはないので、アルト電子に特注した。特注した水晶発振子は一番安価なもので、周波数合わせは自前でする必要がある。表示された周波数より低い方への調整の方が簡単なので、8832kHzと8831kHzをオーダーした。これらを調整して8831.5kHzをBFO、8830.7kHzをCW用キャリア発振とする。

DDS-VFOコントローラー

VFOは20mトランシーバーで実績のある 秋月のDDSを使うことにした。 DDSのコントローラーはJE1AHW内田OMの自作のオアシスから「CYTEC版DDS-VFOユニット(スプリット対応)」を元に穴あき基板で作ったものがあるので、それを使うことにした。

VFO用アンプ

DDSだけの出力ではせいぜい1mW程度なので、数十mWまで増幅する必要がある。今回もVFO出力をスプリッターで2分割して受信と送信用のダイオードDBMへ入力するので最低でも20mW程度が必要である。DDSは近接スプリアスがかなりあるのでLPFよりもBPFの方が有効だと思われる。そのため、FCZコイルを組み合わせたBPFを入出力に配置した2SC1906のアンプを作ってみた。
VFOの周波数範囲は5.0〜5.5MHzとした。DDSの出力を本アンプに接続して出力を計測すると約40mWとなった。40mWあれば、これを2分割して3dBパッドをかませても数mWが得られるのでDBMを駆動できそうである。

左側がVFO用アンプ、右側が秋月DDSキット

RX・TXセクション

RXセクションは2Sk125のゲート接地アンプで軽く増幅した後、ダイオードDBMでIFへコンバートする。そのままでは若干、ゲインが不足するので2SK241で補償してある。ダイオードDBMではなく少しでもゲインのあるMIXERを使った方がトータルバランスが良くなると思われるが、使い慣れた構成でとりあえず製作した。
TXセクションはCWキャリア発振から送信用ダイオードDBMで送信周波数に変換し、BPFを前後に配置した2SC1906で増幅してある。このステージの出力は約10mWで、リレーによりトランスバーター端子とリニアアンプ入力に切り替える。2SC1906の電源をキーイング回路によりによりON-OFFしてCWを作り出す。リニアアンプのドライバー段電源もON-OFFできるようになっているが、トランスバーターと組み合わせる場合、キーイングは2SC1906だけとなるが、キャリアの通り抜けはないようである。
キャリア発振は受信時には停止する必要があるが、電源のON-OFFではQRHの問題がありそうなので、受信時には水晶を短絡するようにしてある。
ダイオードDBMは送受信で兼用できるが、そうするとDBMの前後に切り替え回路を配置する必要があるが、本機のように別々に装備するとこのあたりの回路はシンプルになる。しかし、局発は2つのDBMを駆動する必要があるので、兼用の場合の2倍の出力が必要となる。

リニア・アンプ

リニア・アンプは2段増幅で10mWを5Wまで増幅する。CWオンリーなのでC級でも構わないが、改造元の6m SSB/CW Tranceiverのアンプを手直しした。2SC2058のドライバーに2SC1971PPとなっている。リニア・アンプ基板上にキーイング回路も実装されている。

コントロール回路・LPF・サイドトーン

コントロール回路はセミ・ブレークインによる送受信切り替えをしている。セミ・ブレークイン用のタイマーはコンデンサーと抵抗で構成されている。LPFは定K型4段である。
サイドトーンはNE555を使用したもので電源をキーイングしている。波形はノコギリ状であるが、キーイングによるチャピリがなく他の自作無線機でも使っている。

調整

各基板を接続した後、オシロを使って波形観測した。ポストアンプ出力波形が歪んでおり、どうやら入力オーバーでサチっていたようである。入力側のBPFと2SC1906を結合するコンデンサーを調整し、歪まないようにした。TXセクションの2SC1906の波形も歪んでいたので、DBM前後の3dBパッドの追加と結合コンデンサーで同じく調整した。LOはスプリッターで分配していたが調整の結果、ポストアンプの出力が減少したので、リレーにより送受用DBMに切り替えるように改造した。
CWフィルターが装備されていたTS530ではCWRが8,831.5kHz、CWTが8,830.7KHzとなっており、相手局のCWトーンが800Hzになるように同調させると、相手局の送信周波数に自局の送信周波数が合致するようになっていた。しかし、私は低めの音調でCWを聞くのが好みなので、CWT を100Hz上げて8,830.8kHzとした。これにより、700Hzのトーンとなるように受信すると相手局の送信周波数に一致させることができる。

まとめ

さすがにCW用フィルター、QRMも少なくなりまとめて聞こえていた局が分離できるようになった。ただし、インピーダンスが合っていないのか、それともこれが本来の特性なのか不明であるが、スカート特性が甘いようである。SGから信号を入れて受信ダイアルをまわしトーンとして確認できる受信範囲は約1.6kHzとなった。SSBフィルター装備のTS530で同様の試験を行ったら3.4kHzだったのでこの程度かもしれない。
DDSにするとQRHからは解放されるが、近接スプリアスのせいか、アンテナ端子をショートした状態でダイアルを廻すと、Sメーターを振らすほどではないが、ところどころでビートが聞こえる。幸い、CWバンドには顕著なビートがないのがせめての救いである。送信の方はダミーに接続した状態で、TS530でバンド内をサーチしてみたが、余計なビートは出ていなかったので一安心である。

HOME BACK

Last Update 28/Jan/2004