15m/17m 2BAND SSB/CW Tranceiver
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コンセプト

15mバンドも自作トランシーバーでQRVしているが、ちょっと困った問題がある。このトランシーバーのデジタルVFOはアメリカから通販したキットを利用しているが、その動作原理から発振周波数がある範囲内で常に変動している。SSBではあまり気にならないが、CWの場合は送信トーンがあまりピュアとは言い難い。
それではと、秋月のDDSキットを使ったSGもどきを局発に注入してみると、ところどころにスプリアスが出るが、送信トーンはかなり良くなった。そんなわけで、作り直してみることにする。
IFは9MHz水晶を使ったラダー型であるが、あまり特性がよくないので、これもジャンク箱にあったCB用クリスタルフィルターに置き換えてみよう。ついでに、17mバンドも組み込んで2BANDにしてみる。

構成

基本的にはシングル・コンバージョンのトランシーバーである。バンドは15mと17mの2バンドにする。局発にはDDSを使用すると必要とする周波数範囲を連続してカバーできるが、15mバンド用と17mバンド用のBPFを挿入してスプリアス対策とする。特に15mバンドの場合、DDSの発振周波数とIFが接近しているのでスプリアスの懸念があるが、バンド全てがスプリアスというわけでもないだろう。ところどころにある使えない周波数は我慢することにする。

SSBジェネレーター/CB用クリスタルフィルター

SSBジェネレーター基板は岩本OMが開発したもので、開発された地名から板橋スタンダードと呼ばれている。ほとんどのゲインをAFで稼ぐというかなりユニークなものであるが、実力はかなりのものである。

板橋スタンダード回路図(jpg) 1.72MB

改造前は9.000MHzのラダーフィルターを使っていたが、今回使用するCB用クリスタルフィルターが11.2735MHzなので、ジェネレーター基板のキャリア用水晶交換、IF部の再同調が必要である。キャリア用水晶はVXO回路で11.272MHzに調整した。IFはFCZ9MHz用コイルを使っていたので、同調用コンデンサーを100pFから68pFに交換した。

CB用クリスタルフィルターは二十数年前のCBブームの時に製造されたものである。ジャンク箱に数個眠っていたので使うことにした。簡易的な方法であるが、特性を計測してみた。このフィルターは入力インピーダンス600Ω、出力インピーダンス150Ωなので、SG出力を巻き数比1:3のトランスでインピーダンスマッチングしてフィルターに入力し、出力端は150Ωの抵抗でターミネートしてオシロで電圧を計測した。とりあえず、NO2の方を使用することにした。

ケース

今回もパネルとLアングルを組み合わせてケースを作った。本体はW250mm*D200mm*H40mmのシャーシにW300mm*H100mm*T2mmのアルミパネルを立てたものである。ただし、W250mmでH40mmのシャーシーは売っていなかったので、W300mmのシャーシーをカナノコで50mmだけカットした。このスタイルだとシャーシーの上下に基板を配置できるので便利である。この本体をW300mmのラックに収納する形式とした。もちろん、ラックもパネルとLアングルを組み合わせて自作したものである。ラックタイプなので本体は前面から抜き差しできる。

RFセクション

改造前のRFセクションは2SK125パラのGGアンプにDBMの組み合わせであったが、今回は15mと17mの2バンドとなるので、大幅に手抜きをして2SK241のソース接地アンプにDBMの組み合わせとした。
バンド切り替えは小型安価のリレーを使っている。このリレーは高周波数ではないが、特に問題はないようである。

TX-DRIVEセクション

SSB送信の場合、SSBジェネレーターからの信号は2SK241のプリ・アンプで増幅した後、DBMでLOをMIXされる。その後、バンド切り替えスイッチを通過し、15m用と17m用のBPF+2SK241のポストアンプを通る。その後、2SC1973のドライバーアンプで約100mWまで増幅する。
CWの場合であるが、SSBジェネレーターにCWモードがないので、専用のキャリア発振回路を設けている。SSBジェネレーターのキャリア発振が11.272MHzであるので、CWキャリアは700Hzシフトさせた11.2727MHzとした。この場合、相手局を700Hzのトーンで聞けば、キャリブレート出来ることになる。この回路、受信時には停止する必要があるので、水晶に並列にリレーを入れてアースするようにしてある。電源のON-OFFよりは安定性が良いと思われる。キーイングはポスト・アンプ、ドライバー段の電源ラインのON-OFFで行っている。キーイング回路は後述するコントロールセクションに設けてある。

パワーアンプ・セクション

パワーアンプは当然、リニアアンプとなる。トランジスターは放熱がエミッターとなっていて、絶縁しないで使える2SC1971とした。入力トランスはメガネコアに巻き、出力側はPP用のトランスとソータバランを組み合わせた。アイドリング電流は200mAとしたので、1本当たり100mAとなる。このアンプは出力10Wの実力があるが、入力側に3dBアッテネーターを挿入して出力が5Wになるように調整してある。ドライブ段からの入力は100mWである。

コントロール・セクション

本機に必要なコントロールは送受切替、SSB/CWモード切替、バンド切替である。
受信に関してはSSB/CWとも同じである。ただし、CW送信時にはサイドトーン、セミブレークインが必要となる。サイドトーンはタイマーICの555を使用したものである。セミブレークインは、PTTラインも兼ねているキーイング回路からの制御用電圧をコンデンサーと抵抗を組み合わせた遅延回路に通している。SSBの場合はこの回路をバイパスして送受信の切替を行う。
バンド切り替えは一挙動というわけにはいかない。LOはスイッチON直後は21.200MHzとなるようにプログラミングした。17mバンドへQSYする場合、その状態でダイアルを低い方へ回せばOKであるが、DDSVFOに50kHzステップがあるので、それを利用してQSYする。その他にRF、ドライブ、DDSVFOのBPF切替を行う。これらはリレーを使っているので電源のON/OFFで17m/15mを切り替えている。

LOセクション

LOには秋月のDDSを使用した。 DDSコントローラーはJE1AHW内田OMの自作のオアシスの「CYTEC版DDS-VFOユニット(スプリット対応)」を基に穴あき基板で作った。ただし、オリジナルの周波数ステップは10Hz/100Hz/1kHzであるが、バンドチェンジに素早く対応できるように1kHzステップを50kHzステップに変更してある。
DDS用のポストアンプは2SC1906を使用し、出力側のFCZコイルを組み合わせたBPFを切り替えて15m/17mの2バンド対応としている。出力は約20mWで、DBMのLOポートにアッテネーターを入れる余裕がある。
DDSVFO_PICコントロール回路図 PNGファイル 5kB

まとめ

基板類は個別にテストしてあるので、シャーシーに配置して結線すればOKである。基板類はシャーシー上下に配置出来るので、レイアウトにも余裕がある。
仕様
BAND      15m/17m
Out Put      5W
MODE       SSB/CW
 

ケース(ラック)に収まった本機、Sメーター下のスイッチは左からBAND15m/17m、50kHz/A=B、スプリットON/OFF、VFOA/B、10Hz/100Hzである。パネル下段は左からマイク、電源、PHONE、KEY、MODE、AFである。

シャーシ上部の配置、左からDDSとポストアンプ、2SC1971PPリニアアンプ、下は2SK241のフロントエンド、パネル裏はLCDとDDSコントローラー、右上コーナーにはマイク・トランス(600:600)
マイク・トランスは回り込みで対策用で、マイク入力はこのトランスを介してSSB基板に接続してある。回り込み対策にはこの種のトランスを挿入するのが一番効果的である。

シャーシ内部の配置、左側からSSBジェネレータ基板、その下にコントロール基板、右側は送信ドライバー、CWキャリア発振、キーイング回路の基板

運用

本機は15m自作トランシーバーのVFOをDDSに置き換え、17mバンドを追加し、ケースを新調したことになる。基本的部分は以前のままなので、使えることは判っているが、やはり実際にQSOできるとうれしいものである。
15mはローカルとSSBでQSOでき、音質レポートをもらうことが出来た。マイクトランスの効果なのか回り込みもなく、問題なしとのことであった。17mはロングワイヤーをオートアンテナチューナーで同調させてQRVした。JA7の局がCWでJCCサービスをしていたのでコールしたが、なかなか応答がない。もしやと思ってCWトーンが低めなるようにチューンし直したら無事QSOできた。CWトーンを700Hzに設定したので心がけて低めにしないと、相手方が狭帯域フィルターを入れていると、その帯域内に入らないのかもしれない。とりあえず、17mバンドもQSOできたので一安心である。
製作前に懸念していたDDSのスプリアスであるが、アンテナ端子をショートして受信状態でサーチしてみたが、15mバンドでは数ヶ所ざわつくところがあったが、ビートになるほどではなかった。送信にして別の受信機でモニターしてみたが、これまた数ヶ所ざわつくところがあったが、ビートになるほどではなかった。QRP5W運用であれば他局に迷惑をかけることはないだろう。17mバンドは特に問題なかった。

手直し

17mSSBでQSOした際、回り込みが発生していて歪むというレポートをもらった。確かにPTTを押しただけでもキャリアが出てしまう場合もある。ロングワイヤーが電圧給電になっているのかもしれない。とりあえず、ダミーロードを接続してテストしてみた。 別の受信機でモニターするとダミーロードでも歪んでいる。当たり前であるが、CWではきれいなトーンになっている。リニアアンプへの入力を外して、直接、ドライバー出力にダミーロードを接続した場合、全く問題ない。リニアアンプへの過剰入力でサチっていたようである。3dBアッテネーターを入れたらかなり改善された。
それでもまだピークで歪むというレポートがあった。全体的にゲインの余裕がありそうなので、ドライバー段の2SK241のソースにバイパスコンデンサーなしで51オームの抵抗を入れた。モニターするとかなり歪みが解消されたが、それでもクリアーとは言い難い。やはりどこかで回り込みがあるようである。ジェネレーター基板への12V供給ラインにはフェライトビーズを入れてあるが、念のためトランジスターのリップルフィルター回路を挿入してみた。これが正解でモニターするとかなり満足できる感じとなった。

手直しその2

本機をトランスバーターの親機にすることを思い立った。ターゲットは10m(28MHz)と12m(24MHz)である。15m(21MHz)バンドを親機にして10m(28MHz)に出ようとするとトランスバーターの局発が7MHzとなるので、スプリアスの関係で問題が多い。17m(18MHz)を親機にするとトランスバーターの局発が10MHzとなるが、こちらの方が問題がなさそうである。

トランスバーターと接続する場合、小出力の送信端があると便利なので改造することにした。ドライバー段出力にリレーを入れてリニアアンプとトランスバーター送信端の切替が 出来るようにした。送信端には21MHz用のLPFを設置した。送信端での出力は約40mWである。

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Last Updated 02/Sep/2005 by mac