VT-25/VT-25A シングル直結アンプその2
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はじめに

知人から中古の真空管アンプ用シャーシーを頂いた。
このシャーシーは前段用にMT管が3本、出力段用にST管やGT管を2本、配置できるシングル用である。
そのような訳で、手持ちのシングル・アンプでお蔵入りとなっているものを移植することにした。
ターゲットになったのはVT25/VT25A Stereo Amplifier で、このアンプはかれこれ20年以上も前に製作したものである。
しかも、トランス類に至っては筆者が40年前に購入したものであるが、今回、移植するために取り外してチェックしたら、電源トランスはOKだったが、出力トランスは1個が断線していた。
そのため、電源トランスはそのまま使用し、出力トランスは手持ちの東栄T-1200に変更することにした。

回路

移植前は前段SRPPのコンデンサー結合だったが今回は直結に変更する。
VT-25/VT-25Aの直結はすでにVT-25/VT-25A シングル直結アンプとして製作しているが、この時は前段を6AQ8としたため、B電圧が365Vでは、動作基準点が250V15mAとなったため、出力は0.5Wしか得られなかった。
今回、B電圧は450V程度を見込むことができるが、前段を真空管にするとVT-25/VT-25Aのプレート電圧は300Vがやっとということになってしまう。
そのため、前段をFETと真空管を組み合わせたカスコードにして、直結にした場合のVT-25/VT-25Aのグリッド電圧を50V程度に抑えることにした。
幸いなことにVT-25/VT-25Aは他の直熱3極管に比べるとバイアスが低いので、50V程度の電圧でもドライブすることが可能となる。
結果的にVT-25/VT-25Aの動作基準点は350V22.5mAとなり、予想される出力は7kオーム負荷で1.0Wである。
(動作特性図)
前段は2SK30A12BH7Aの組み合わせとした。
2SK30Aは2.5mA程度のドレイン電流を流すので、IDSSが4mA以上のものから選別し、カスコード用真空管は低電圧でもそこそこプレート電流の流せる12BH7Aを採用した。
12BH7Aの動作点を45V2.5mAにするとバイアスは-1.5Vとなり、12BH7Aのカソード電圧は1.5V、これが2SK30Aのドレイン電圧となる。
しかし、これでは低すぎるので、グリッドにツェナー・ダイオードで安定化した4.5Vを印可してカソード電圧を6Vまで引き上げてある。
2SK30Aのソースには100オームの可変抵抗を挿入し、これで12BH7Aのプレート電圧が51V〜53Vとなるように調整する。
直結の場合、電圧バランスを取るのが難しくなるので、前段の供給電圧をリップル・フィルター兼用の定電圧電源により180Vに安定化している。
また、前段の12BH7Aのウォーム・アップに合わせるため、整流管を傍熱管の5V4としたが、電圧が高くなりすぎたので、500オームの抵抗を電源回路に挿入して調整してある。

構成

当初、カバー付きの出力トランスをシャーシー上に配置するつもりであったが、残念ながら断線していたので、東栄のT-1200をシャーシー内に配置した。
元々あった部品取付け用の穴はアルミ板等で塞いである。

球はトリニーテッドタングステン・フィラメントのRCA 10/VT-25なので、良い具合に光っている。
なお、前段は日立の12BH7Aである。

シャーシーの寸法はW:350mm*D:280mm*H:50mmであるが、内部の配置は結構、タイトである。
元々の取り付け穴を利用したので、出力トランスの向きが90度ずれてしまい、残留雑音はR ch;0.3mV、L ch;1.3mVと電源トランスに近いL chが多めになってしまった。

特性

NFB=6dBでDF=2.6となった。
前段にFETを使用しているので、入力300mVでフルパワーの1.1Wとなった。

-3dBの範囲は
1.0W:25Hz〜32kHz
0.5W:20Hz〜32kHz
0.125W:15Hz〜32kHz
となった。

歪率5%のポイントは
1kHz:1.1W
10kHz:1.1W
100Hz:1.0W
となり、特性図から予想した1.0Wが得られている。

まとめ

NFBを掛ける前に試聴した時は、荒々しさがあるもなにかキラキラした音に思えたが、さすがにNFB=6dBとしたら、落ち着いた音に変わってしまった。
周波数特性はカマボコ型で残念ながら低域が弱い。
本来であれば、10kオーム以上のロードラインで使用したいところであり、やはり東栄T-1200では力不足かもしれない。
それにしてもVT-25/VT-25Aは難しい球である。

トランス換装

10kオーム以上のロードラインで使ってみたくなり、出力トランスを春日KA-1425に換装した。
動作基準点は東栄T-1200と同じ350V22.5mAにして、 KA-1425は10kオームと14kオームのタップがあるので、それぞれの特性を計測した。

14kオーム負荷における-3dBの範囲は
1.0W:20Hz〜40kHz
0.5W:15Hz〜40kHz
0.125W:10Hz〜45kHz
となり、7kオーム・ロードよりもワイドとなったが、 300kHzにピークが出ている。

14kオーム負荷における歪率5%のポイントは
1kHz:0.74W
10kHz:0.74W
100Hz:0.66W
となり、出力は0.7Wに低下した。

10kオーム負荷における-3dBの範囲は
1.0W:15Hz〜55kHz
0.5W:15Hz〜45kHz
0.125W:15Hz〜55kHz
となり、14kオーム・ロードよりもよりワイドとなった。
特性も素直である。

10kオーム負荷における歪率5%のポイントは
1kHz:0.88W
10kHz:0.78W
100Hz:0.78W
となり、出力は14kオーム・ロードより増えて0.8Wである。

トランス換装その2

つぎに動作基準点を375V17.5mAに変更してみるが、そのためにはB電圧を30V程度、高くする必要がある。
(動作特性図)
電源回路に挿入してあった500オームの抵抗を取り外し、耐圧を確保するためにFETフィルターの電解コンデンサーを100uF400Vのシリーズに変更した。
さらに、出力段のバイアス用抵抗をトータル5kオームに変更した。
結果的ではあるが出力段の動作はフレート電圧378V、プレート電流18.4mA、バイアス-33Vとなった。
(参考 RCA 10 データシート)
変更後の回路図を以下に示す。

特性は350V22.5mAの結果から最初に10kオーム負荷を計測してみた。
10kオーム負荷における-3dBの範囲は
1.0W:25Hz〜35kHz
0.5W:18Hz〜40kHz
0.125W:15Hz〜45kHz
となり、高域にアバレもなく素直な特性となった。

10kオーム負荷における歪率5%のポイントは
1kHz:1.1W
10kHz:1.0W
100Hz:1.0W
となり、出力も1.0Wが確保、出来ている。

念のために周波数特性だけであるが14kオーム負荷を計測してみた。
14kオーム負荷における-3dBの範囲は
1.0W:20Hz〜35kHz
0.5W:18Hz〜40kHz
0.125W:15Hz〜40kHz
となり、300kHzにはアバレがある。

まとめその2

2つの動作基準点で、それぞれ10kオーム・ロードと14kオーム・ロード、計4パターンで計測し試聴してみた。
最大出力が得られたのは動作基準点が375V17.5mAで10kオーム・ロードであるが、試聴してみると低域がイマイチである。
同じ10kオーム・ロードでも350V22.5mAの方は出力は少ないが、低域が伸びており、試聴の結果も良かったので、最終的には350V22.5mA、10kオーム・ロードに設定した。
いずれにしても 春日KA-1425は東栄T-1200よりも周波数特性、歪率特性とも優れている。
試聴結果でも、低域が改善されたのが印象的であり、東栄T-1200よりも上手の聴感が得られている。

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Last Update 12/Nov/2012 by mac