PC用2.1chスピーカー・システムとなり、低域も出るようになったが、そうなるとアンプを換えるともっと良くなるのではと欲が出てくる。
ステレオからモノラルに変換し、LPFを経由する2.1ch用アダプターを作り、2台の既存真空管アンプを組み合わせれば、真空管方式の2.1chシステムとなりそうである。
部品箱をチェックしたら、適当なケースと入出力用のRCA端子が不足しているだけで、その他のパーツは揃っている。
それならばと、2.1ch用基板を既存アンプに組み込んでみることにした。
2.1ch用基板を組み込むアンプは
FETドライブ 6DJ8 シングル直結アンプとした。
このアンプにしたのは内部の配置を整理すれば、2.1ch用基板を組み込むスペースが得られるのと、
真空管アンプにしては小型なので、PCラックに収納しやすいからである。
2.1ch用基板回路はPC用2.1chスピーカー・システムと同じである。
R・Lの2ch信号は2SK30のソース・フォロワーを経由し、OPアンプの加算回路でモノラルに変換後、多重帰還型LPFを通過し、サブ・ウーファー用出力となる。
ただし、基板の電源は当初、アンプ前段の24V電源から降圧しようとしたが、基板の入力インピーダンスがかなり低いようで、必要とする電圧が得られなかった。
苦肉の策でヒーター電源を片波整流し、5Vレギュレーターを経由して供給することにした。
フルレンジ側の特性は
FETドライブ 6DJ8 シングル直結アンプで示したとおりである。
最初はLPFの特性である。
赤線は、アンプ入力に信号発生器を接続し、モノラル出力端子の電圧を計測した特性である。
なお、アンプ入力のR・L間は短絡し、モノラル出力端子は47kオームでターミネートしてある。
カットオフ周波数は100Hzで10Hzまでフラットとなった。
黒線はモノラル出力に6922(6DJ8)差動PP直結アンプ ミニワッター版を接続し、8オーム負荷で1V(125mW)となるようにして計測した特性である。
アンプの低域特性が良いので、低域に関してはLPF単独の場合と違いがないことが分かる。
入力に2SK30ソースフォロワー回路が追加されているので、
フル・レンジ側のクロストーク特性をチェックしてみる。
8オーム負荷で1V(125mW)となるようにレベルを調整し、他チャンネルの漏れを計測した。
点線で示したラインは2.1ch用基板を取り付ける前の特性である。
やはり、1kHzあたりから上昇が始まり中高域に影響が出ているが、20kHzで-55dBがなんとか確保できている。
モノラル出力に6922(6DJ8)差動PP直結アンプ ミニワッター版を接続し、90Hzにおける歪率特性を計測してみた。
黒線は比較のためのアンプ単独の100Hzにおける歪率特性であるが、やはりモノラル出力は2.1ch用基板を経由しているため、悪化している。
写真のような組み合わせで試聴してみた。
当然、フルレンジ側アンプは本機で、サブ・ウーファー用アンプは6922(6DJ8)差動PP直結アンプ ミニワッター版で、片チャンネルだけを使用した。
そのため、終段の真空管は全て6922(6DJ8)となった。
PC用2.1chスピーカー・システムも安物PCアンプからサルベージした基板の割にはそれなりに健闘していたが、やはり、本システムと比べると見劣りする。
これならば、PC用スピーカー・システムではなく、普通のオーディオ・システムとしても使用できると思われるが、音量はかなり抑えめとなる。
本機だけであれば、PCラックに何とか、納めることができそうであるが、ネックとなるのはサブ・ウーファー用アンプである。
今回は手持ちの真空管アンプを使用したが、別に真空管でなくてもよいので、D級アンプであれば、かなりコンパクトに作れそうである。
更に、サブ・ウーファー用スピーカー・ボックスに組み込んでアクティブ・スピーカーにすることも考えられる。
サブ・ウーファー用の専用アンプを製作してみた。
手持ちパーツの関係から5687差動PPモノラルである。
5687差動PPは何回か製作しているが、今回は前段のFETには2SK170を使用し、出力トランスは東栄のOPT10P[10kΩ]とした。
その他のトランスは東栄の10VA絶縁トランスと6.3V1Aヒーター・トランスを使用した。
周波数特性は5687差動PPモノラル単体のもので、NFB=6dB、DF=1.6である。
歪率特性は、上述した6922(6DJ8)差動PP直結アンプ・ミニワッター版を接続した場合よりも改善されている。