96kHz24Bit USB-DAC の実験では、96kHz24Bitで再生可能なEDIROL UA-1EXを使用したが、EDIROL UA-1EXは録音機能(ADC)もあり測定器代わりにも使っているので、DAC専用には出来ない。
96kHz24BitUSB-DACのキットがあれば良いが、残念ながら適当なものが見つからない。
そこで、安価な完成品の96kHz24BitUSB-DACを改造してFET差動バッファ・アンプと組み合わせてみることにした。
ネット検索すると上海問屋のDN-USB DACがヒットした。
値段も送料込みで4,000円台、改造情報も豊富なので、アマゾン経由で購入した。
DN-USB DACは光や同軸のデジタル入力では、192kHz24BitまでサポートしているD/Aコンバーター搭載ヘッドホンアンプで、RCA端子のライン出力も備えている。
ただし、筆者の環境ではUSB入力のみなので、96kHz24Bitが上限となり、バスパワーで動作する。
とりあえず、オリジナルのままでいろいろといじってみた。
先ず、LinuxのMPDサーバーで動作するか確認してみた。
特別なドライバーなしで、ALIX3D2+Voyage MPDでもRaspberry Pi+Raspbian“wheezy”でもデバイスとしては問題なく認識された。
ALIX3D2+Voyage MPDでは問題なく動作し96kHz24Bitの楽曲ファイルも再生できた。
Raspberry Pi+Raspbian“wheezy”では、44.1kHz16Bitの楽曲ファイルは再生できたが、96kHz24Bitでは再生時にブヅブツと音切れが発生してしまった。
残念ながら、EDIROL UA-1EXを使用した96kHz24Bit USB-DAC の実験と同じ結果となってしまった。
当然であるが、Windows7PCでは全く問題なく動作する。
DN-USB DACをALIX3D2+Voyage MPDに接続して周波数特性を計測してみた。
計測方法はWGで96kHz24Bit 0dBFSの正弦波wavファイルを作り、それを再生してアナログ出力を電子電圧計(LEADER LMV-186A)で測定した。
正弦波wavファイルの周波数は5Hz、10Hz、20Hz、50Hz、100Hz、1kHz、10kHz、20kHz、25kHz、30kHz、35kHz、40kHz、45kHzで、録音時間は20秒とした。
ライン出力の負荷抵抗であるが、真空管アンプを接続することを想定して47kオームとした。
1kHz0dBFSを再生すると出力電圧は1.12Vとなり、一般的なCDプレイヤーの出力電圧は2.0Vなので、ちょっと低めである。
ライン出力の周波数特性では、低域で低下が見られ、高域に持ち上がりがあるのが分かる。
また、無信号時の残留雑音が16mVも計測されている。
ヘッドホン出力の計測では音量調整ボリウムをMinから1/3程度回転させた状態で計測した。
これは手持ちのヘッドホン、audio-technica ATH-FC7を接続して適当な音量となったボリウムの位置である。
負荷抵抗は36オームとし、1kHz0dBFSで150mVとなった。
ヘッドホンで聞いていると特に低域不足は感じられなかったが、特性上では低域におけるかなりの低下が見られる。
無信号時の残留雑音は0.8mVであった。
基板を観察した結果と参考にしたサイトの情報を総合すると、DN-USB DACではDACチップ(CS4344)のアナログ出力をライン系統とヘッドホン系統にパラレルに取り出しているだけのようである。
そこで、ライン系統とヘッドホン系統に挿入されているDCカット用の電解コンデンサーを撤去し、ライン系統の電解コンデンサーの+側からRCA端子の隙間を通して、外部に信号を取り出すことにした。
この信号をFET差動バッファ・アンプに入力して、ライン出力専用のUSB-DACとするので、ヘッドホン出力はなくてもかまわない。
なお、ライン系統にはCRによるフィルター回路らしきものが挿入されているが、残留雑音が16mVもあることから、あまり効いていないようである。
[注意] 基板の写真では外部出力を電解コンデンサーの-側から取り出しているが、基板の印刷の方が間違っており、これで正解である。
改造したDN-USB DACとFET差動バッファ・アンプを接続してライン出力専用USB-DACに仕上げてみる。
外部に取り出したDACチップ(CS4344)のアナログ出力には220uF50Vの電解コンデンサーを挿入し、その後、390オームと4700pFによるLPFを通してFET差動バッファ・アンプに接続される。
ただし、LPFは手持ちCRで構成したため、最適化されておらず、チューニングの余地は十分にある。
また、仕上がりの出力レベルを2Vにするために、FET差動バッファ・アンプのNFB抵抗10kオームに36kオームの抵抗をパラ接続してゲインを下げた。
当初、DN-USB DACは基板だけにしてタカチのケース(YM-200)に組み込むつもりでいたが、アース・ラインの絶縁が面倒だったので、アルミ板の切れ端でサポート金具を作り、プラスチックケース込みで組み込んだ。
下記に周波数特性と歪率特性を示す。
本機をALIX3D2+Voyage MPDと接続し測定したが、
計測用のソースはWGで作った96kHz24Bitの正弦波wavファイルであり、歪率特性はWG、WSによる歪率の測定によるものである。
赤線がDAC+FET差動バッファ・アンプ(LPF込み)の周波数特性であり、黒破線がFET差動バッファ・アンプ(LPF込み)単体の特性である。
DCカット用の電解コンデンサーを220uFに増量したことにより、DACチップの出力は5Hzから45kHzまで、ほぼフラットであるが、FET差動バッファ・アンプと組み合わせるとLPFが効いているのが分かる。
また、LPFにより残留ノイズが0.5mVまで低下した。
歪率特性では1kHz、100Hzは特性が揃っているが、10kHzは悪化している。
なお、同様の構成である秋月のUSB-DAC KIT + FET差動バッファ・アンプの方が1kHz、100Hz、10kHzのカーブは揃っている。
秋月のUSB-DAC KIT(PCM2704)、EDIROL UA-1EX、今回のDN-USB DACと3種類のDACとFET差動バッファ・アンプを組み合わせてみた。
3種類のDACを比較するための周波数特性を下記に示す。
残留ノイズであるが、USBケーブルを接続しないFET差動バッファ・アンプ単体では、秋月キットのPCM2704、DN-USB DACとも0.1mVであったが、USBケーブルを接続し再生可能状態にすると、秋月キットのPCM2704は0.2mV、DN-USB DACは0.5mVとなったが、
DN-USB DACでは、LPFで切る帯域が広くなっているので、そのためかもしれない。
残念ながら、EDIROL UA-1EXでは残留ノイズの計測を忘れてしまった。
気になる音であるが、同じマスターから起こされたと思われる楽曲wavファイルの96kHz24bit版と44.1kHz16Bit版で比べてみたところ、EDIROL UA-1EXよりもその差が顕著になった感じがした。
多分、96kHz24bit版の方が最新のデジタル・リマスターだと思われるが、丁寧な仕事がされているようで、高品質だと感じた。
44.1kHz16Bit版で秋月のUSB-DAC KIT(PCM2704)と比較してみるとDN-USB DACの方がきらびやかな感じがした。
CDアルバムからリッピングした44.1kHz16Bit wavファイルを聴く分には、96kHz24BitのDACでなくても良いのかもしれない。
本機は作ってみたものの出番がなくお蔵入りの状態であったので、FET差動バッファ・アンプを別のDACの実験に転用してしまった。
そのため、DN-USB-DAC(96kHz24Bit)だけが残ってしまったので、これを再活用してみる。
DN-USB-DACは出力のコンデンサーを外しただけなので、再装着すれば問題なく使用できるが、ライン出力では無信号時の残留雑音が16mVもあるので、LPFを内蔵してみる。
プリント生基板の切れ端にLPFと出力用コンデンサーを配置して、ビニール袋に入れケース内部に収納した。
内蔵したLPFが効いているので無信号時の残留雑音は0.5mV、周波数特性は5Hz-47kHzまで、ほぼフラットとなった。
このDN-USB-DACは、PCのUSB端子に接続してモニター・スピーカーを鳴らしている。