USB-DAC KIT + 真空管バッファ・アンプの製作 その2
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プロローグ

USB-DAC KIT + 真空管バッファ・アンプが気に入ったので、同様なコンセプトで、もう1台、作ってみる。
前作ではUSB-DAC KIT自体が初めての経験であったので、当初はマニュアルどおりに作り、その後、必要な改造を施した。今回は最初から真空管バッファ・アンプを組み合わせるので、USB-DAC KIT自体も事前に改造してしまう。
使用するUSB-DAC KITは前作と同じ共立電子のUSBオーディオI/Fキットである。

P-G帰還アンプ

前作では6DJ8/E88CC差動アンプをバッファとしたが、同じでは芸がないので、差動ライン・プリ・アンプを紹介している、ぺるけ氏の同じページにあったP-G帰還のアンプを組み合わせてみる。
差動アンプでは左CH、右CHで1本ずつ、計2本の双3極管が必要となるが、P-G帰還では左右で1本の双3極管で済む。
P-G帰還アンプに使用できる手持ち双3極管は12AU7、6BQ7A、E88CC、7308/E188C等があるが、シールドのある6BQ7A、E88CC等がクロストークでは有利となるので、これらをターゲットとする。

電源回路

必要とする電源はB電源用の200V10mA、ヒーター用の6.3V0.3-0.35A、DAC用の3.3Vが2系統である。 手持ちのトランスをチェックしたら100V5VAの絶縁トランス(ノグチトランス)、6.3V0.5Aのヒータートランス(S.E.L)が出てきた。
B電源は100V5VAの絶縁トランスの倍電圧整流、ヒーター用とDAC用は6.3V0.5Aをブリッジ整流することにする。

この程度の回路ではラグ板でも作れるが、今回はプリント基板を使用してみた。
銅箔面はパターン面を広く取るようにして、 境界部分をルーターや彫刻刀で削り取るという方法である。
この方法であればエッチング不要でプリント基板が作れるが、単品生産向けの方法である。
部品類は全て手持ちのもので、いわゆるオーディオ・グレードのものではない。

写真左がB電源
写真右がヒーター・DAC電源

写真をクリックすると基板裏となります。

USB-DAC KITの組み立て

USB-DAC KITは真空管バッファ・アンプと組み合わせるので、OPアンプ周りは、ジャンパー線でバイパスしてしまう。
また、USB-DAC KIT + 真空管バッファ・アンプ製作時にこのキットの低域特性が落ち込んでいるのが判明しているので、その対策も施した。
結果的には、PCM2704のアナログ出力にカップリング用として1uFのコンデンサーを挿入しただけの回路とし、1uFのコンデンサーは、キットに入っていたOPアンプ出力用のものを流用した。
LPF等が必要になったら、外部回路で組み込むことにする。

電源も製作済みなので、バラックで組み合わせて特性を計測してみた。
PCにインストールしたefu氏のテスト信号発生ソフト WaveGeneで44.1kHz、16bitの サイン波を発生させ、USB-DACを経由してアナログ出力電圧を計測してみた。アナログ出力は50kオームでターミネートしてある。
WaveGeneを1kHz、0dBにセットするとOPアンプなしのUSB-DAC KITでは0.62Vとなり、比較したEDIROL UA1-EX(0.66V)とほぼゲインが同じとなった。

当然、この状態でも音出しが出来る。
USB-DAC KIT + 真空管バッファ・アンプと聞き比べてみたが、ゲインの違いがあるだけで音の違いはよく分からなかった。
ある意味ではバッファに使用してる6DJ8/E88CC差動・アンプが、余計な色づけをしない非常にナチュラルなアンプなのかもしれない。

バッファ・アンプ

バッファ・アンプには前述したようにP-G帰還アンプを使用する。
ソリッド抵抗の手持ちのがあり、信号経路にはこの抵抗を使うことにしたので、 帰還用の抵抗は50kオームと180kオームとなった。 これだと前作よりはバッファ段のゲインが若干、高くなり3倍程度となる。
カソード・パスコンは一応、オーディオ用の1000uFとした。真空管パワー・アンプを接続することを前提としており、負荷側インピーダンスを50kオーム程度と想定したので、出力側のカップリング・コンデンサーは1uFとした。
発振防止用として3.9kオームの抵抗をグリッドに挿入したので、念のため、これに200pFのコンデンサーを組み合わせてLPFを形成してある。
本来ならば、試聴してからLPFをどうするか決めるべきであるが、真空管ソケット回りの配線が入り組んでおり、後から手を入れるのが困難なので、シミュレーターで検討した結果、200pFを挿入することとした。
バッファ・アンプはサブシャーシー上に構成した。手持ち品を流用したので、真空管ソケットはシールド・ケース付きであるが、 シールドなしでも問題ないと思われる。

電源部、バッファ・アンプをケース(タカチ YM250 W250mm*H50mm*D170mm)に組み込んだ。
リップル・フィルター用のFETは数十mWの損失が発生するので、念のため、裏パネルに密着させてある。
表パネルには電源スイッチとLEDランプ、裏パネルにはUSB端子、RCA端子、ヒューズ、電源コネクターを配置した。

使用真空管

本機に使用できるピン・コンパチブルで似たような特性の真空管は7DJ8、6BQ7A、6DJ8/E88CC、7308/E188CC等である。
それぞれの真空管を差し替えた各部の電圧は下記のとおりとなった。
本来のヒーター電圧が7.6Vである7DJ8とヒーター電流が0.4Aと一番、大きい6BQ7Aでは、ヒーター電圧が規定値よりもかなり低くなってしまった。やはり6.3V0.5Aのトランスでは無理があるようである。
そのため、本機では写真右端のナショナル・ブランドの7308/E188CCを使うことにしたが、もちろん、6DJ8/E88CCでもOKである。

特性

青色がP-G帰還のバッファ・アンプを付加した本機の周波数特性である。
赤線で示したOPアンプなしのPCM2704だけの特性に比べると低域も高域も落ち込みが大きくなっている。
低域側の落ち込みが気になるようであれば、バッファ・アンプの入出力に入っている1uFのコンデンサーの容量を増やせば、改善されるはずである。
高域側もLPFを構成するコンデンサーを200pFとしたが、100pF程度でもよかったかもしれない。
ゲインは、ほぼ3倍となった。

エピローグ

前作のUSB-DAC KIT + 差動アンプよりもかなりコンパクトに仕上がった。
ケースには放熱用の穴を設けなかったが、長時間、通電してもほんのり、温かくなる程度である。

写真下段が前作のUSB-DAC KIT + 差動アンプ、中段が本機、上段がDACと接続するASUSのNETBOOKである。
このASUS Eee PC 901のストレージはSSD、音楽CDをリッピングしたソースもSDカードに格納されているので、このシステムでは、回転モーターなしのソリッド・ステートとなる。
家人も動員してUSB-DAC KIT + 差動アンプと本機を聞き比べてみたが、残念ながら違いがわからなかった。

追補

DAC部の電源回路にフェライト・ビーズを挿入し、LPFをチューニングしたので、現状の周波数特性と歪率特性を下記に示す。

追補その2

いつも参考にしている「ぺるけ氏」のサイトの「AKI.DACキット製作ガイド」にローパスフィルタ例が記載されているが、このLPFを本機に応用してみる。
本機ではDAC出力とP-G帰還バッファ・アンプ間は1uFのコンデンサーで結合されているが、前々からこの容量が少ないのではと思っていた。
今回、この1uFのコンデンサーを外し、この間に左図のLPFユニットを挿入してみた。
手持ちの関係で結合コンデンサーの容量は100uFとなったが、ここまで大きくしなくてもOKである。
下図は周波数特性であるが、低域は5Hzまでフラットになり、残留雑音も0.26mVまで低減されている。

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Last Update 25/Sep/2012 by mac