6BM8や6FM7を使用したシングル直結アンプの実験を行ったが、これを実際のアンプとして製作してみる。
球は3極管である6FM7に食指が動くが、ここは省電力に徹して6BM8の同等管でヒーターが8.2Vである8B8を採用することにする。
今回はスクラッチから製作するわけではなく、8B8を使用した8B8差動PP直結アンプを作り直すことにする。
このアンプは一時期、リビングの常用アンプであったが、現在はお蔵入りの身である。
回路はシングル直結アンプの実験とほぼ同じであるが、出力トランスが春日のKA-5730に替わっている。
B電源は、FETフィルター以降、左右分離してある。
出力段の動作点は190V28.4mAとしてあるが、これはLM317の定電流設定用抵抗に22オームをシリーズにしたためである。
差動PPではないのでマイナス電源は不要だが、これをインジケーターLEDの電源としてるので残してある。
8B8差動PP直結アンプの出力トランスはシャーシー内部にあったが、これを外してそこへFETリップル・フィルターを置くことにした。
FETリップル・フィルターを使用するのでチョーク・コイルは取り外した。
今回の出力トランスはカバー付きなので12AT7があった場所に配置する。
PP用に9ピン真空管ソケットが4個、一列に配置してあるが、今回、使用するのはその内の2個だけである。
しかし、ヒーター配線をやり直すのが面倒であるので、そのまま残してある。
8B8差動PP直結アンプに比べて、出力段カソード電圧が数十V上昇したので2k20Wの抵抗を追加した。
使用した8B8は「MADE IN JAPAN」だけで、ブランド名は書かれていないが、球のつくり自体は丁寧である。
比較のために8B8差動PP直結アンプのデータも8B8PPとして表示してある。
入出力特性はさすがに8B8差動PP直結アンプの方が余裕があるが、差はほんのわずかである。
クリッピング・ポイントは0.8Wであり、DF=10となった。
周波数特性であるが、低域は8B8差動PP直結アンプの方が延びているが、高域は本機の方がアバレもなくきれいに伸びている。
歪率はWG、WSによる歪率の測定により測定した。
典型的なシングル・アンプの傾向を示しているが、1kHzにくらべ、100Hz、10kHzが良くない。
クロス・トーク特性はB電源を左右チャンネルで分離したせいか、20Hzでも-60dB、中域では-80dBと優秀である。
エージングも済んだので、経験豊かなアンプ・ビルダーである知人宅に持ち込んで評価してもらった。
使用したスピーカーも本格的なホーンタイプの2ウェイである。
筆者が今まで評価してもらったアンプの中でも秀逸で「シンプル イズ ベスト」とのことであった。
知人のリファレンス・アンプ(211シングル)と比較すると、低域はさすがにダメで音域は全体的に持ち上がっているが、コスト・パフォーマンス抜群で、よく健闘しているという感じてあった。
B電源入力とヒーター入力の合計は31Wで、筆者が今まで製作した真空管アンプの中でも少ない部類に入る。
クォリティーを確保しつつ、省エネも実現でき、夏に向けてリビングの常用アンプとなった。