8B8差動PP直結アンプ
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プロローグ

「差動PP直結アンプの実験」「差動PP直結アンプの実験その2」で2段構成SRPPドライブの直結アンプの 実験を行ってきた。
実験はモノラルアンプであったが、試聴した感じでは輪郭のくっきりした音という印象があった。これをステレオにするとどのような音になるのだろうかという思いが募った。
ただし、DCバランスの安定性に関しては、これといった解決策は見いだせていない。
とりあえずの見切り発車であり、場合によってはカップリング・コンデンサーを挿入してSRPPドライブの差動PPになるかもしれない。

8B8

出力管は6BM8の8.2Vバージョンである複合管の8B8を使用した。
6FM7の方が3極管であるので好ましいが、ヒーターが1.05Aも食うし、プレート電流も多めに流す必要があり電源も大がかりになるので、手軽さから8B8とした。
8B8の3極管と組み合わせてSRPPを構成する球は手持ちのある12AT7とした。
アンプ部の回路は「差動PP直結アンプの実験その2」と同じである。ただし、入力部のボリウムと並列に470kオームの抵抗を挿入してある。これは入力部のグリッドがアースから浮いてしまうとDCバランスがくずれ、出力段に過大電流が流れるのを防止するためである。
出力トランスは東栄のOPT-10(8k)である。
電源部は2個のトランスで賄っている。
B電源には30VAの絶縁トランスを倍電圧整流する。トランスには複数のタップが出ているので、電圧の調整が容易である。
ヒーター用には8V3Aのトランスを使用した。0V-8V端子から8B8へ供給し、0V-6V端子から12AT7へ供給する。供給電圧は定格電圧(8B8の8.2V、12AT7の6.3V)よりは若干、低くなるがそれでも-5%以内である。
ヒーターには+50V程度のバイアスをかけてある。8B8のSRPPを構成する3極管のカソードと3結にした出力管部のカソード電位は数十Vとなるので、H-K耐圧の不足を補うためである。

シャーシーと配置

シャーシーはW300mm*D200mm*t2mmの裁断済みのアルミ・パネルと木製サイド・パネルを15mm*15mm*t2mmのL型アングルで接合して作った。
横板の高さを140mmとし、シャーシーをひっくり返しても真空管を保護できるようにしてある。そのため、シャーシー内部をチェックする場合でも真空管を挿したままでOKである。
アルミのサブ・パネルに入力RCA端子とボリウムを取り付け、前面パネルをくり抜き、はめ込んである。
チョークだけはシャーシー上部に配置したので、間の抜けた感じとなっている。

電源トランス、出力トランスは端子がむき出しのため、シャーシー内部に収納した。
出力管カソードに挿入した抵抗(1.2kオーム20W)の消費電力は2.5Wもあるので放熱のため、シャーシーに密着してある。
定電流ICはフル・モールド・タイプを使用したので、絶縁なしでシャーシーに取り付けてある。


特性

ノン・クリップ出力は0.85Wである。
もう少し出力があればと思うが、ドライブ不足のようである。前段SRPPの供給電圧を上げたいが、そうすると出力段のカソード電圧も上がり、プレート電圧も上がることになり、現在のトランスでは賄いきれない。

NFBは約2.5dBかけてある。
高域は40kHzにかなり大きなディップがあるが、低域は素直に伸びている


歪率特性は「WG、WSによる歪率の測定」によるデータである。
ノン・クリップ出力が0.85Wしかないので、0.5Wを超えるとカーブが立ってくる。

クロス・トーク特性は出力0.5Wに設定して測定した。
L-CHに入力しR-CHの漏れ測定では、10kHzから悪化し始めているが、それでも可聴周波数範囲の20Hz-20kHzにおいて-70dBを確保できており、全く問題ない。

エピローグ

アンプの安定性であるが、DCバランスを数十mV以内に追い込んでおけば何とかなっているようである。
なお、DCバランスは出力トランスのP1-P2間の電圧を計測している。
東栄OPT-10(8k)の1次巻線抵抗は374Ω±5%であるので、P1-B・P2-B間は187Ωとなる。 そのため、アンバランス電流(mA)はテスター表示電圧(mV)を187で除した値となる。 P1-P2間の電圧は、概ね±数十mVに収まっているのでアンバランス電流(mA)は1mA以下となる。
思いついた時に計測するが、最大でも数百mV程度なので、アンバランス電流(mA)は数mA以内に収まっているようである。
ただし、R側の方が変動が少ないようである。8B8は計6本購入したが、その内3本が同一ブランドでこれからペア取りしたのがR側である。
DCバランスに関しては、球を選別して変動の少ないペア取りができれば理想的であるが、そのためには使用数の2倍程度が必要となる。
前段は30年以上前に購入したテレフンケンのE81CCを使用しているが、球自体も封入してあるユニットもバラツキが非常に少ない。

音をコメントする能力はないのではあるが、あえてコメントしてみたい。
このアンプのノン・クリップ出力は1Wにも満たないが、非常に豊かな低域を持っている。 そのため、音域全体が広がったようであり、なおかつ、音もクリアーになった。
初めての差動アンプである「1626 PP Stereo Amplifier」にも感激したが、それ以上のパフォーマンスを持ってるようである。

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Last Update 3/Aug/2010 by mac