「6N6P差動PP直結アンプ」を製作したが、音が気に入ったのでリビングの常用アンプになっている。
しかし、出力トランスに東栄のOPT-10 8kを使用したせいか、周波数特性では低域は100Hzあたりから落ち込みが始まり、高域には大きなディップがある。
出力トランスを春日のKA-8-54に載せ替えるとどうなるのかと思ったので、改良タイプのKA-8-54P2を購入した。
当初は単純に出力トランスの載せ替えだけのつもりでいたが、
ぺるけ氏のサイトの
「平衡型6N6P全段差動プッシュプル・ミニワッター」というコンテンツに触発され、平衡型のアンプを製作してみたくなった。
平衡型アンプの場合、ソース機器も平衡型が必要となるが、「トランス式DAC」があるので、これをちょっとだけ改造すれば平衡出力が得られる。
平衡型にするためには、
6N6P差動PP直結アンプを改造すれば簡単であるが、手持ち部品が結構あったので、新規に製作することにした。
そのため、回路はぺるけ氏のオリジナルとは若干、異なっている。
電源トランスはトヨズミの240V:100V 20VAトランスの1次、2次を入れ替えて使用し、ヒーター・トランスは東栄の6.3V2Aとした。
6N6PのカソードにはLM317Tの定電流回路を挿入し、制限用の抵抗を10オーム+22オームの32オームとしたので、トータルのプレート電流は39.0mA(片ユニットでは19.5mA)となっている。
使用した2SK117、2SC1815、2SK30、ツェナー・ダイオードはぺるけ氏から頒布していただいたものである。
シャーシーはアルミパネル(w:300mm*d:200mm*t:2mm)を木枠で囲んだもので、サイド・パネルには持ち手用の穴を開けてある。
サイド・パネルはアンプを点検するためひっくり返しても真空管を保護できるような高さにしたが、リビングのテレビ台の下には入りきらなったので、後から10mmほどカットした。
シャーシー上は電源スイッチ、LEDランプ、ヒューズ・ホルダー、スピーカー端子、ボリウム、入力コネクター、6N6Pを配置した。
出力トランスを含め全てのトランスはシャーシー内に格納し、電磁誘導の影響を最小にするためにこのように配置した。
シャーシー中央の15Pラグ板は2枚をスペーサーで挟んで2階建て構造としている。
平衡アンプの特性を計測するためには、平衡入出力のある電子電圧計や信号発生器が必要であるが、残念ながら所有していない。
仕方ないので、本機入力のコールドとアースをショートして不平衡入力にして不平衡アンプとして計測した。
周波数特性は出力0.125W、0.5W、1.0Wで計測した。
低域は10Hzまでフラットで、高域も素直なカーブとなっている。
歪率特性は「WG、WSによる歪率の測定」によるデータである。
歪率特性からも出力1.0Wが得られていることが判る。
本機を使用するためにトランス式DACを平衡出力に改造したので、それと組み合わせて特性を計測してみる。
WGで44.1kHz16BITの信号を発生させ、本機の出力に接続した電子電圧計で計測するが、このトランス式DACと組み合わせて実際に聞いているので、この特性の方が現実的なのかもしれない。
周波数特性は出力0.125W、0.5W、1.0Wで計測した。
アンプ単体時と比較すると低域はほぼ同じであるが、高域は10kHzから低下が始まっている。
これはトランス式DACの性能によるものである。
歪率特性はアンプ単体時と傾向は相似である。
リビングの常用アンプは「6N6P差動PP直結アンプ」であったが、本機に入れ替えてみた。
入れ替えた当初はさほど良いとは思わなかったが、数日、経過してエージングが進むと今までとは違う音になってきた。
低域がしっかりと出てくるようになり、音像が平板ではなく、奥行きがはっきりと分かるようになった。
筆者の駄耳ではあてにならないので、本機と平衡出力に改造したトランス式DACを知人宅に持ち込んで評価してもらった。
試聴に使用したスピーカーはAltec A7で、良いスピーカーでは「それなりのアンプでもそれなりに音が出てくる」のかもしれないが、知人からも高い評価を頂いた。