貰い物の真空管アンプであるが、実験のベースとしても最適であるので、 最近の自作テーマである直結シングルの実験を行ってみた。
最初はアンプに搭載されていた6GA4である。
6GA4はすでにコンパチブル・シングル直結アンプで使用しているが、IP=20mAというきわめて慎ましい動作である。
ここではマニュアルにもある250V40mAをターゲットに実験してみる。
回路は前段をE188CCとした2段構成である。
カソード電流を40mAとするとプレート-カソード間電圧が250Vとなり、マニュアルにある動作例と一致する。
クリッピング・ポイントは2.5Wであり、動作例と一致している。
DF=5.25、NFB=7.1dBである。
1W出力時でも-3dBの範囲は15Hz-90kHzと非常にワイド・レンジである。
典型的なシングル・アンプの歪率特性である。
歪率1kHz5%の出力は2.5Wとなっている
次は6GB8である。
この球はアンプと一緒に頂いたもので、ペアー箱に入っている貴重品である。
6GB8を使うのは初めてなのでネットで情報収集したが、やはり65〜100mA程度のIPを流しているようである。
電源トランスのタンゴ ST-130では、そこまで賄いきれないので、IP=50mAとIP=40mAで特性を計測してみたが、あまり違いが認められなかったので、6GA4と同じIP=40mAとした。
6GB8は当然、3極管接続であるが、同じIP=40mAの動作でも6GA4よりも感度が高いので、カソード電圧が2V程度、低下している。
クリッピング・ポイントは3W弱である。
DF=6.1、NFB=8.4dBである。
1W出力時でも-3dBの範囲は15Hz-100kHzと非常にワイド・レンジであるが、小出力時には低域が持ち上がっている。
6GA4よりも低歪みであり、歪率1kHz5%の出力は3W弱となっている
次はEL34である。
IP=40mAで計測したが、EL34は6GB8よりも感度が低く、出力も少ないが、特性的にはかなり似通っている。
感度が低いため、カソード電圧は6GB8よりも3V高い93Vとなった。
6GA4と6GB8はそのまま、挿し替えることができるが、EL34の場合はNo1ピンをカソードに接続する必要があり、配線を変更しなければならない。
クリッピング・ポイントは2W強である。
DF=5.2、NFB=4.2dBである。
1W出力時でも-3dBの範囲は15Hz-100kHzと非常にワイド・レンジであるが、小出力時には低域が持ち上がっている。
特性的には6GB8とうり二つである。
歪率も6GB8と相似であるが、歪率1kHz5%の出力は6GB8よりも若干低めの2.2Wである。
実験用アンプであるが、ステレオ構成となっているので、自宅システムに組み入れて試聴した。
6GA4はコンパチブル・シングル直結アンプに比べるとレベル・アップしているのが良く判った。
出力トランスの性能も良く、IP=40mAと2倍も流しているせいか、全体的な余裕を感じることができたが、音質的には同じ傾向である。
6GB8は6GA4に比べるとダイナミックである。エージング不足かもしれないが、荒々しさを感じた。
EL34は6GB8よりも好ましく感じた。荒々しさがなくなり、最近の常用アンプであるVT52シングル直結のような繊細さはないが、その代わり、ある種の豊かさがある。