友人から譲られたアンプである。といっても友人が製作したわけではなく、彼も知人から譲られたが、使う当てもないとのことで、筆者の所へ来た次第である。
ボンネット付きのシャーシーに組み込まれた真空管アンプである。
6GA4が2本、ECC83が1本のシングル・アンプである。
トランスは全てタンゴ製で電源トランスST-130、出力トランスH-5S、チョーク・コイル10H130である。
6GA4は当然ながら東芝製、ECC83はテレフンケン製である。
配線を追っていくと電源の平滑回路は2段構成で、そのためチョーク・コイルが2個、使われている。
また、大容量の電解コンデンサーが投入されている。
オーソドックスなコンデンサー結合の2段アンプである。
出力トランスの電源側や前段のプレート抵抗の電源側に平滑回路とは別の電解コンデンサーが挿入されている。
また、電解コンデンサーには0.22uFが並列接続されている。
カップリング・コンデンサーはベースとなる0.1uFにディップ・マイカ0.01uFが並列に
接続されている。
外観や使用しているパーツから推測すると本アンプは1970年代に製作されたもののようである。
電源平滑回路の2段化、電解コンデンサーに並列に接続された0.22uF、交流回路を最短化するための電解コンデンサー、2種類のコンデンサーを並列接続したカップリング・コンデンサー等、今では当たり前のテクニックが30年以上も前に使われている。
ここまでチェックすると通電したくなる。
通電して各部の電圧をチェックすると正常である。しかし、しばらくしたら33uF350Vのチューブラー型電解コンデンサーから煙が出てきた。
すぐに電源をOFFして確認すると発熱しており本体も膨らんでいた。さすがに、電解コンデンサーは全て交換しないとダメなようである。
このアンプにはかなりの容量の電解コンデンサーが使われているので、全てを交換できるだけの手持ちがない。
回路コンセプトをあまり変えずになんとか通電できるように整備してみた。
チョーク・コイル2個を使用した平滑回路をFETリップル・フィルターに変更し、交流回路最短用コンデンサーとデカップリング回路を省き、
併せて電源トランスのタップを135Vから120Vへ変更した。
整備したアンプの回路は以下のようになった。
再整備したアンプを測定してみる。
ノンクリップ出力は2.0W、DF=4.6、NFB=6dBであった。
各出力における-3dBの範囲は
0.125W:10Hz-80kHz
0.5W:15Hz-80kHz
1W:20Hz-80kHz
となり、かなりのワイド・レンジである。
出力トランスの性能が良さそうである。
音出しをしてみたが、今まで製作したアンプと比較しても取り立てて良いという感じはないし、6GA4シングルはすでにコンパチブル・シングル直結アンプがあるので、トランス類を別のアンプのためにキープしておくつもりである。
このアンプを譲ってもらって驚いたのは、筆者自身が40年前に全く同じトランスを使って6GA4シングルを製作していたことである。
裸シャーシーに前段は6SN7、NonNFBという構成で、当時、測定器を持っておらず作り放しであったが、自分なりに満足して使っていた。
今回、計測してみて、6GA4とタンゴH-5Sの組み合わせはそれなりのパフォーマンスがあったことが判明してうれしくなった。